“地域に根差す”を体現する。千葉・東金の小さなリサイクルの輪
2022年に環境に配慮した店舗「グリーナーストア」の国内2号店としてオープンした、道の駅みのりの郷東金店。千葉県東金市にある、道の駅 みのりの郷東金に併設され、これまで道の駅のみなさんと一緒に様々な活動を行ってきました。11月には、以前から準備していたコーヒーかすの“小さなリサイクルの輪”を地域の方々とともにスタートするワークショップを開催。その様子をお届けします。
小さなリサイクルの輪とは?
この場所では、東金市と東金市に工場を構える三友プラントサービスとの連携のもと、コーヒー抽出後の“コーヒーかす”を、千葉県内で資源循環する活動を行っています。
コーヒーかすは牛の飼料として再活用され、その飼料で育った牛から搾られたミルクが、道の駅 みのりの郷 東金に並ぶ牛乳やプリンとなって私たちのもとへ戻ってきます。

これを“大きなリサイクルループ”とすれば、今回の試みは、“小さなリサイクルの輪”。一歩踏み込んで、道の駅内で廃棄物を資源循環する仕組みです。スターバックスの店舗から出たコーヒーかす、道の駅で収穫されたオリーブの搾りかすなどを活用してたい肥を作り、道の駅内での循環利用を目指しています。
この日のワークショップでは、地域の方々とともに、たい肥作りにチャレンジしました。
みんなで育てる、東金の“みのり”
道の駅の芝生広場に集まった小中学生や高校生、そして大人たち。手にしているのはスターバックスのコーヒーと、道の駅で販売されているバウムクーヘンです。まずはコーヒーとバウムクーヘンのコーヒーテイスティングからスタート!
このバウムクーヘンには、千葉県内で取り組んでいるコーヒーかすのリサイクルループから生まれたミルクが使われています。活動の背景をお伝えしながら、地域のみなさんとテイスティング。そのおいしさに、子どもたちは大満足の表情を浮かべていました。
「みのりのさと~!」の掛け声に続き、参加者全員で「東金!」と声を合わせ、場が一気に盛り上がります。続いては、コーヒーかすのたい肥作りにチャレンジです。
コーヒーかすや木くず、オリーブの搾りかす、そして発酵を促進するために、すでに熟成されたコーヒーかすのたい肥を、子どもたちが協力してバケツに入れ、しっかりと混ぜ合わせていきます。

「混ぜるの楽しい!」
「コーヒーのにおいがめっちゃする!」
「サラサラになってきたよー」
と、元気な声が芝生広場に響きました。

木くずを混ぜ合わせると水分が吸収され、サラサラの状態に。落ち葉を入れた大きなコンポストにそれを加え、さらに米ぬかを重ねて作業は完了。これから半年かけて、この場所でじっくりと熟成させます。

ほかにも、パートナー(従業員)たちが仕込んでおいたたい肥を使って、「コーヒーノキ」や「ブルーベリー」、東金市の木「ラカンマキ」の苗木の寄せ植えやコケ玉づくりなども行い、参加者は土との触れ合いを楽しみました。
「楽しかった!ペットボトルのキャップを集めたり、日ごろからリサイクルに気を付けています」と話してくれたのは、参加した中学生のひとり。若い世代の中でも環境への意識は広がっているようです。今回のイベントでは、設営やテイスティング用コーヒーの準備に、地元の東金商業高等学校の学生たちが学びの一環として参加し、活躍してくれました。また、家族での参加も多く、地域の人たちが自然とつながる、温かな交流の場となっていました。

ともに育てる、地域とのつながり
道の駅みのりの郷東金店は道の駅を拠点として、持続可能な循環型社会を目指しながら、地域の方々とのつながりを大切によりよい未来に向けた活動を進めています。オープンから3年半の間、道の駅やそこに関わる方々との信頼関係を少しずつ築いてきました。

植木のまち・東金市ならではの特色を生かし、店舗の植栽は道の駅を通じて整えていただきました。また、夏休みには小学生向けにリサイクルループを知ってもらうためのワークショップを開催したり、スターバックス・道の駅・三友プラントサービスの飼料化の工場を巡る教育関係者向けのツアーを実施したりと、様々な取り組みを行ってきました。
道の駅のいちご狩り用ハウスでは、一部にコーヒーかすのたい肥を実験的に使用し、道の駅の方々とパートナーたちがビニールハウスの中で一緒に土を耕しながら、いちご狩りの季節を楽しみにしています。
「一緒にいろいろなチャレンジができる距離感でお仕事させていただいています」と、話すのは、道の駅駅長の内山さん。それに道の駅みのりの郷東金店ストアマネージャー(店長)の佐久間さんも「一緒にお店を作っていただいていると感じています」と笑顔を見せます。
こうした実践を重ねる中で、次に目指したのが、より地域に根ざした循環のかたち“道の駅内で完結する小さなリサイクルの輪”でした。
小さなリサイクルの輪に込めた、地域とともにあるという想い
「スターバックスにとって廃棄を減らしていくのは、当然取り組むべきことだと考えています。では、その先に、地域とどんなつながりを築き、何ができるのか。私たちはコーヒーかすをリサイクルし、それを生かして地域のみなさんが自分のまわりの身近な環境について気づき、行動につなげられるようにと考えました」と、道の駅内での資源循環を行う理由を、佐久間さんはそう語ります。
この取り組みの本質は、「地域に根差すとは何か」という問いに集約される――そう語るのは、内山さんです。
「地元の人や学生、企業と一緒に楽しみながら発信することで、受け取った人や関わった人が、“自分も地元を盛り上げるようなことに携わりたい”と思ってくれたら、この仕事をしていてよかったと思えます」

この日仕込んだたい肥は、道の駅の植栽や、子どもたちとのワークショップで植木鉢に使うなど、様々な活用方法が検討されています。
「道の駅には野菜の納品のため、たくさんの生産者さんが出入りしています。将来的には、その方たちに使っていただいて、できた野菜を道の駅で販売する…そんなふうに地域としてのつながりを深められたらいいな」と、佐久間さんは思いを描きます。
小さなリサイクルの輪は、地域の関係性を育てる大きな力になる。たい肥がゆっくり熟成していくように、その関係性も着実に広がっていきます。