誰もが自分らしく輝ける社会へ。NO FILTERを語り合う社内LGBTQ+勉強会を開催
認定NPO法人ReBitとパートナーが登壇し、語り合う場を企画
スターバックスは、一人ひとりが自分らしく生きられる居場所をつくり、自分の能力を生かし活躍できる社会を目指し、先入観や思い込み、偏見を持たずにお互いを認め合う「NO FILTER(ノーフィルター)」というメッセージを社内外に発信しています。2021年4月19日、NO FILTERの前提となる現実をともに学び、理解を深めるために、ラウンドテーブル(スターバックスの社内勉強会)をオンラインで開催。全国のパートナー(従業員)およそ100名が参加しました。
ゴールデン・ウィークは、LGBTQ+(性的マイノリティ)をはじめ、誰もが生きやすい社会を目指しイベントなどが行われる「プライドウィーク」でもあります。2021年も、4月から5月5日にかけて多くのイベントがオンラインで開催されました。
スターバックスはこれまでも、サステナビリティの取り組みや未来を切り拓く若者をサポートする「ハミングバードプログラム」などのラウンドテーブルを開催してきました。国内でLGBTQ+などに関する機運の高まるこのタイミングに、社内でインクルージョン&ダイバーシティについて学び理解を深めようというのが今回の趣旨です。「全ての子どもが、ありのままの自分で大人になれる社会の実現」を目指して活動する認定NPO法人ReBit(リビット)の藥師 実芳(やくし みか)さんをゲストに、パートナー代表の2名も登壇。多様性を認め合う職場や社会をどう実現していくか、自らの体験を元に語り合いました。
男女の二者択一ではない性の多様性
ひとえに性といっても、性自認(自分がどのような性別だと思うか)、生物学的性(身体的・生物学的な性の特徴)、性的指向(好きになる性)、表現する性(例えばファッションやしぐさなど)などで表すことができます。いわゆる性的マイノリティといわれるLGBTQ+を含めすべての人の性のあり方は、グラデーションのように多様です。
勉強会ではまず、ゲストスピーカーである藥師さんから、LGBTQ+を取り巻く課題と認定NPO法人ReBitの歩みが語られました。
藥師さんによると、LGBTQ+は国内に3〜10%ほど。つまり左利きやAB型と同じぐらいの割合でいます。しかしLGBTQ+の子どもは家庭でも学校でも適切なサポートを得づらく、約7割がいじめを経験し、トランスジェンダーの約6割が自殺を考えるという深刻なデータも。
藥師さん自身も、女性の体に生まれて男性と自認するトランスジェンダーです。子どもの頃から性別に違和感を覚えていましたが、誰にも言えず正しい情報もないまま悩み、17歳で気持ちは限界に。「号泣しながら友達に打ち明けたら、『やくしは、やくしじゃん』と言ってくれたんです。たったひとりでも受け入れてくれる人がいると、こんなに生きやすいんだ!と知りました」と自らの体験を語りました。
安心して自分を表現できる環境づくりが大切
当たり前のように違いを認め尊重し合える社会は、どうしたら実現するのでしょうか。今回の勉強会のメインとして、LGBTQ+当事者と自認する2名のパートナーが登壇し、企画を担当したSocial Impactチーム・林 絢子さんも参加して、ゲストの藥師さんの進行でクロストークを展開しました。
藥師さんの問いに答え、職場のインクルージョン&ダイバーシティをテーマに、登壇したパートナーたちがスターバックスでの経験を振り返りました。「(自らのセクシュアリティについて)とくに隠していない」「言っても引かれなかったのが嬉しかった」「研修先店舗で自己紹介をするときに、僕はゲイです、私は障がいがあります、と語る人たちと出会って、そういうことを素直に言える環境なんだなと実感した」など、ありのままで働くことができる職場の様子が次々と語られました。「店舗で働くパートナーの服装のルールが性別に基づくものではなく、全員同じというのが良かった」というコメントから、スターバックスの定番スタイルが図らずも多様な性のあり方を受け入れる土台として機能していることも共有できました。
今回登壇したパートナーのひとり、ストアマネージャー(以下SM)の村瀬さんは、どんなお客様も受け入れる温かい店舗を評価され、2020年度のStore Manager of the Yearを受賞しています。多様性を受け入れる店舗づくりの工夫を問われた村瀬SMは、「自分の経験を話すなど、どんな話をする時にも先入観やバイアスをかけず、いろいろな可能性や選択肢があって大丈夫と思ってもらえるような会話を毎日心がけています」と答えました。
佐藤さんは、健聴のパートナーと聴覚に障がいのあるパートナーが手話を用いてともに働くnonowa国立店のパートナーです。「店舗立ち上げの時、手話の表現は地域や人によって少しずつ違うけれど、無理にそろえず『違ったままでいいよね』と話し合いました。それから、視覚など身体に障がいのあるお客様を含め本当に様々なお客様が多くいらっしゃる店舗なので、声が出せない私たちがどう対応したらよいか、毎日勉強しながら接客しています」と、手話でこの店舗ならではのエピソードを語りました。
「私自身、発達障がいのあるダブルマイノリティなんです。聴覚障がいがあり、LGBTQ+当事者であることで、大変だったことはありますか?」と藥師さんに問われた佐藤さん。「まず情報を得るのが大変です。私は地方出身なのですが、東京に比べて地方にはLGBTQ+の情報は少なく、様々な人が居るということや、色々で良いということを知ったのは東京に来てから。さらに聴覚障がいのため、より情報へのアクセスに時間がかかりました。自分のようにろう者でLGBT当事者である人たちの団体を知ったのも、東京に来てからです」と情報へのアクセスや、コミュニティが属性ごとに分かれてしまいがちであるという課題を、自身の経験から共有してくれました。
林さんは、代表を務めるNPOで多様なメンバーを束ねる藥師さんに、居心地のよい組織づくりの工夫を質問。
「自分には知らないことがある、気付いていないことがある、と思っておくこと。気付かせてくれた時に『気付いていなかったごめん。でも教えてくれてありがとう』と言えること。そして、何でも安心して話せる“心理的安全”が最も大事だと思います」という藥師さんの回答に大きくうなずきました。
「インクルージョン&ダイバーシティは、いくら学んでも終わりがありません」と林さん。「自分と異なること・人に対して知ろうとせず殻に閉じこもっていたら、知るきっかけも人を思いやる機会も得られないので、個人としても組織としても、常に教えていただけるような環境を自分自身でつくる必要があります。対話できる環境づくりが一番大切ですね」
大学在学中の20歳の時にReBitを設立した藥師さん。企画したLGBTQ+イベントの盛況を機に、推されて学生団体を立ち上げ、大学卒業後にNPO法人化しました。いつも周囲のひと押しで前進してきたと言います。「隣の人や社会や環境は、誰もが変えられる。私も今日ご参加の方々も、みんながチェンジメーカーなんです」。こうして、藥師さんからのエールが温かい余韻を残す中で、約1時間のラウンドテーブルが幕を閉じました。
お客様ともNO FILTERの共有を。多様性を表現したカップを販売
ラウンドテーブルを開催した4月29日は、「カラーチェンジングコールドカップセット NOFILTER」の発売日。登壇者4人のテーブルには、4色のカップが1個ずつ置かれました。冷たいドリンクを入れると色の変わるこのカップは、「自分の中にある多様性」を表現しています。この商品の売り上げは、10%を認定NPO法人ReBitに寄付し、多様性やLGBTについて考える授業を中高生に届ける「レインボー学校プロジェクト」に使用します。LGBTQ+コミュニティの支援において、レインボーのアイテムを身につけることには大きな意味があり、お客さまが使うことで応援できるアイテムとして企画しました。
藥師さんはラウンドテーブルでつらかった子ども時代を振り返り、「あの時、『あなたのままで大丈夫』と周りに言ってほしかった」と語りました。今この瞬間にもどこかで、周りと違う自分に、ひとりで悩んでいる子どもたちがいます。多様な個性が輝ける社会をつくり、子どもたちが安心してありのままで大人になれるように。子どもたちにとって身近な存在であるスターバックスの店舗パートナーも講師として学校に訪問し、自らのストーリーを生徒たちに語っています。
スターバックスは「お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくる」という理念を掲げています。今回のラウンドテーブルでは、登壇したパートナーが自ら、自分が自分らしくある日常の風景を語り、その文化を体現しようとする様子が発信されました。オンライン視聴で参加したパートナーからは、「知る機会を作ってくれてありがとう」という言葉や、同じ立場にあるパートナーのストーリーにより「無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)について考えさせられた」といった感想が寄せられました。
インクルージョン&ダイバーシティは社会全体で考えるテーマであるとともに、ほかの誰でもなく自分自身のことであり、自分の周りの家族や友人のこと、そして日々お迎えするお客様のことでもあります。スターバックスは、この身近な課題をより深く理解するために、今後もさまざまなバックグラウンドを持つパートナーの協力を得ながら、知り、語り合う場づくりをしていきます。同時に、こうした学びの発信やアイテムの販売を通じて、お客様ともインクルージョン&ダイバーシティをともに考える機会を増やしていきたいと考えています。