地域をつなぐ。「JIMOTO made Series」が生み出す力


地域の人、文化、伝統、歴史をスターバックスのアイテムでつなぐ

「人々の心を豊かで活力あるものにするためにーひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」

「JIMOTO made Series」は、そんな地域への思いを込めて、地元の産業や素材、職人の技術を取り入れた商品を開発し、その土地の限定店舗で販売するシリーズです。商品を通じて、地域の文化や産業、そしてそれらに携わる地域の人たちのことを知り、地元に対する愛着や誇りを感じてもらいたいという願いを込めています。

シリーズを企画したのは、現・サイレンリテイルプロダクトイノベーション部MD チームの濱田 和史さんです。

濱田さん(右)と、現在シリーズを企画する商品本部MD開発チームの小野美香さん(左)

ある陶磁器メーカーを訪ねた際、黙々と作業する職人の姿と、生み出される素晴らしい器に心を打たれたという濱田さん。一方で、そうした商品の国内需要が落ち込み、仕事が減少している状況も知りました。

「産業の縮小は止められないとしても、知らないうちに消えてしまうのではなく、ひとりでも多くの人に魅力的な国内産業や伝統技術、文化を知ってもらう機会を作りたいと思いました」と、当時を振り返ります。

第1弾として2015 年に登場したのは、江戸切子の「スターバックス アイスコーヒーグラス」でした。東京・墨田区にある「すみだ江戸切子館®」の職人が制作し、墨田区の6店舗限定で販売しています。

このグラスを皮切りに、「JIMOTO made Series」は2021年7月現在、14 地域・61 店舗で展開されています。今年の5月には、シリーズを販売する店舗のストアマネージャー(店長)や商品開発担当者などが一堂に会し、オンラインにて「JIMOTO  SUMMIT」(以下、サミット)を開催。シリーズへの思いや、各店舗での事例を共有しました。

地元の産業や工芸を推薦するのは全国のパートナー

「JIMOTO made Series」の新商品を発案するのは、各地の店舗パートナー(従業員)です。全国の店舗より産業・工芸の候補を募り、その中から年間3件程度を商品化。パートナーたちから届くリクエストは年間40~50 にも上ります。

商品化をきっかけに、地元パートナーたちが職人のもとを訪れ、工房を見学することも。地域のイベントに参加して、アイテムを通じて地域の魅力を広く伝える活動につながった事例もあります。

5月に開催されたサミットでは、青森県・津軽地域の取り組みが紹介されました。

お客様がガラス工房に就職も! 4色を展開する青森・津軽びいどろ

青森県西部・津軽地方7店舗では、多彩な色表現が特徴のハンドメイドガラス「津軽びいどろ」のグラスを展開しています。

雪解けと春の芽吹きをイメージした「TSUGARU」、弘前公園の桜を表現した「HIROSAKI」、津軽湾の青とねぶたの赤を配した「AOMORI」、五所川原のたちねぶたをイメージした「GOSHOGAWARA」。グラスは4種類ありますが、それぞれ名前を冠した地域の店舗だけで販売しています。その理由を同地域のパートナー・福井さんは「実際に足を運んで風土や街の人に触れていただき、津軽各地の豊かな四季と文化を感じてもらいたいんです」と話します。

津軽びいどろの特徴である色表現と地域性を結びつけ、異なる魅力を発信していく。津軽の文化をよく知る地元店舗のパートナーたちだからこそ、実現できた取り組みです。

サミットで発表する福井さん

2017年に「津軽びいどろ」を発売して以来、パートナーたちは制作を担当するガラス工房・北洋硝子株式会社との交流を続けてきました。「工場見学に行ったパートナーは皆、職人のみなさんの真摯な姿、このグラスにたくさんの手が関わっていることに心を揺さぶられて帰ってきます」と福井さん。見学で得た知識や感じた思いを、店舗でお客様に伝えているそうです。

サミットには、北洋硝子の壁屋 知則さんも登壇。「JIMOTO made Series」を通して確かな手ごたえを感じていることを語ってくださいました。壁屋さんは伝統工芸が衰退する2大要因として、販売力の弱さと職人の後継者不足を挙げ、「この2つの問題を解決できる力が、JIMOTO made Seriesにはある」と言葉に力を込めます。

サミットで思いを語る北洋硝子株式会社代表・壁屋さん

「津軽びいどろは全国に流通していた反面、地元・青森との関係性が希薄でした。しかしJIMOTO made Seriesで地元での認知度が上がったことを肌で感じます。この商品やスターバックスというブランドにのせて津軽びいどろを発信でき、発信を繰り返すことで青森でも大きく成長しています」(壁屋さん)

北洋硝子は職人の平均年齢が30代と若く活気のある工房。実は、職人のひとりは、店舗の企画した工場見学をきっかけに就職を決めた経緯があるそう。これまで津軽びいどろを知らなかった方に地元産業の魅力が伝わったことで、実際に伝統を継ぐ担い手が生まれた嬉しい事例となりました。

まだまだ発展する「JIMOTO made Series」

「JIMOTO made Series」がスタートして6年。日常のあり方が変化する今だからこそ、身近な地元の魅力を見つめ直すことが大切なのではないか。今回のサミットは、そんな思いが発端となって企画されました。

「新しい商品企画はもちろんのこと、今あるアイテムの魅力を丁寧に発信し、いっそう醸成していきたいと思っています」と商品開発チーム・小野 美香さんは語ります。一方、2021年1月に山梨県・甲州エリアで販売の始まった「甲州印伝スリーブ付カップ」では新しい可能性も見えてきました。甲州印伝は鹿革に漆をつけて加工した伝統工芸品です。

「パートナーの提案と、害獣として駆除される鹿の革を有効利用できないかという行政からの働きかけが合致して生まれたアイテムです。伝統や文化に加え、“環境”という視点からも展開ができることを実感しました」(小野さん)

パートナー、職人、お客様が地元の魅力を改めて知る機会をつくり、地元産業の発展を願う「JIMOTO made Series」。今後も多くの魅力的なアイテムと、モノに込められたストーリーをお届けしていきます。

※ 「JIMOTO made Series」 の商品はこちらからご覧ください。https://www.starbucks.co.jp/jimoto/?nid=mm