持つ人の幸せを願う。御所人形作家が生み出すJIMOTO Made+の新作


「JIMOTO Made」をさらに発展させ、商品の背景にある技術、文化のほか、そこに関わる人と情熱を東京から広く伝えていきたいという想いが込められている「JIMOTO Made +」。2022年12月13日(火)に登場する新作は、京都・御所人形の技法を用いて作られた「人魚」「白鯨」「宝船」の3種類の商品です。制作する、京都市東山区の二寧坂にある御所人形の老舗・島田耕園人形工房の現当主・五世 島田耕園氏を訪ねました。

江戸時代から続く縁起物、御所人形

京都の東山エリア、祇園・八坂神社方面から清水寺をつなぐ石畳の小径、二寧坂。坂道を上っていくと右手に、“日本家屋のスターバックス”で知られる京都二寧坂ヤサカ茶屋店があり、向かいに位置するのが島田耕園人形工房です。1859年に創業し、代々、御所人形、節句人形などを制作しています。店棚にはかわいらしい稚児の人形が並び、その奥に座り筆をとるのが、島田さんです。

御所人形とは江戸時代中期に創製し宮中や公家の間で好まれた主に裸の子どもの人形。白い肌、三頭身から四頭身のまるみのある愛らしい姿や表情が特徴です。子どもの健やかな成長を願って作られたのが始まりとも伝わり、幸福や繫栄を願う形に発展して吉祥感のあるものが多くテーマになっています。

御所人形の美しさは、江戸時代から連綿と続いてきた職人の技術、文化、風土などによって生み出されてきたもの。「そこには日本人が歩んできた道と、精神性のところでつながっているものがある。それは心の安らぎだったり、スターバックスさんの理念である“人と人とのつながり”だったり。だから、こうやってコラボして形作ることができるんです」と島田さんは言います。

島田さんとスターバックスとは、京都二寧坂ヤサカ茶屋店が開店する頃からの縁。以来、「JIMOTO Made」の東山地区限定商品のほか、スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京で年末に販売する干支置物などでコラボレーションしてきました。今回、JIMOTO Made +の定番アイテムとして登場するのは、スターバックスのロゴ「サイレン」をモチーフにした「人魚」、スターバックスの名前のルーツになった小説『白鯨』をイメージした「白鯨」、人魚と白鯨とともに海を航海する「宝船」。この3つは、いわばスターバックスの象徴がモチーフ。デザインが決まるまで1年半を要し、島田さんは「大変重い話であり、やりがいのある仕事やった」と振り返ります。

伝統を生かし新しいものを作り続ける中で生まれた人魚、白鯨、宝船

実際に作業を見せていただくと、筆を動かす島田さんの周囲には静謐(せいひつ)とした空気が流れているように感じます。島田さんが大切にしているのは、伝統技術を生かして、今の世の中をどう表現するかということ。その姿勢は、家訓「長流日々新(ちょうりゅうひびあらた)」にも通ずるものがあります。

「大河は湖のように水が流れていないように見えるけれど、実は水はとどまらずにずっと流れている。僕たちの仕事も、常に新しいものをつくりだす。同じ精神性の中で今にどう生かすのか、それが今とどう重なり合うのかということを考えながらつくっていく」と島田さん。

そうして出来上がったのが、今回の商品です。こだわったのは、JIMOTO Made +の中で日本、そして京都ならではの主張をすること。でもそれを強調しすぎず、ストーリーとして落とし込むことに注力しています。作品一つひとつを見ていきましょう。

持つ人の道しるべ「JIMOTO Made + 東山 人魚」

一体一体、丁寧に長い黒髪を描いていく島田さん。美しい歌声で航海士たちを魅了するギリシャ神話のサイレンを和様式で表現するにあたり意識したのは、“古代からの日本の美しい人”。

「日本の美人の象徴であるお福顔にしました。古くは日本神話に出てくる天鈿女命(アマノウズメ)がお福顔だったと言われていてね」

手に平和の象徴の白いハトを持って笑みを浮かべるお福顔の人魚は、平安時代の長く垂れ下がった垂髪に、下半身は女官の緋袴をモチーフにした美しい立ち姿。こうした人魚の装束にも願いが込められています。

「日本の星の表現方法は、絵に描く時は点か丸なんです。黒地に金の砂子を散らして銀河をイメージし、星を模した蛇の目(二重の丸)を描いています。この星が、持つ人の願いの道しるべになるようにと想いを込めました」

幸せへと導く「JIMOTO Made + 東山 白鯨」

貝殻からつくられる日本画の白色絵具・胡粉を下塗り、中塗り、上塗りと、濃度を変えて何重にも塗り重ね磨き上げるのは、御所人形の伝統的な技。その技法を用いているのが白鯨です。

「御所人形にとっては、この仕事がいちばん大事な作業。塗り重ねていくと貝のエナメル質の光沢がのって、ほわっとしたやわらかな白になるんです。その白を大事にして白鯨の存在感をみせています」

全体に丸みを帯びて頭は大きく、尾は小さく、どこかユーモラスな形は、幼い鯨のイメージ。尾とひれには金泥(金粉をにかわ液でといたもの)を、噴気孔には星印をあしらっています。

悪夢を払う「JIMOTO Made + 東山宝船」

人魚、鯨とともに航海する色鮮やかな宝船。船前部には米俵を、後部にはコーヒー豆の麻袋を積み、世界の農園からコーヒー豆を届けるスターバックスらしい宝船になっています。帆の「獏」の文字は、古くから描かれるもののひとつです。「初夢を見る時に枕の下に宝船の絵を置いて寝ると幸せを運んできてくれるという言い伝えがあるんですよ。悪夢を食べてくれると伝わる“獏”は、よい夢を見るようにと描かれたんです。宝ではなく、“獏”にして、幸せを追求して航海する船にしました」

3商品はいずれもスターバックスにちなんだ星のマークがあしらわれ、すべて「幸せに導かれますように」という願いが込められています。「お店がお向かいさんでスターバックスの帰りに、工房を訪ねてくれる人も多い」と、身近に感じているからこそ、その想いはさらに深まるのだと語ってくれました。

姿かたちだけでなく、装飾に至るまで持つ人への想いが込められています。星に祈りを込めるように、JIMOTO Made +の特別な人魚、白鯨、宝船に願いを託してみませんか。

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「目に見えにくい特徴も大切に」スターバックスが考える『NO FILTER』な社会とは?