“旅する”タンブラーはどこへ行く?アップサイクルで、コーヒーシーンを彩る新商品が登場
スターバックスのタンブラーは多くのお客様に利用いただいている人気商品。お客様に店舗へご持参いただくことで、使い捨て資材の削減につながっています。今回、そのタンブラーを再利用して新しい製品を生み出す「ループアクション」から新たな商品が誕生しました。
全国のお客様の協力で集まったタンブラーの総量は約2トン。タンブラーの旅はどんな商品へとつながっていくのでしょうか。今回は、商品開発を担当した商品本部リテイル商品開発グループマネージャーの後藤 護さんからのお話をお届けいたします。
2030年までに廃棄物50%削減。商品づくりでできることは。
スターバックスは「リソースポジティブカンパニー」を目指し、あらゆる取り組みを進めています。そのために掲げている目標のひとつが、店舗などから出る廃棄物を2030年までに50%削減するというものです。
これまでスターバックス店舗で販売する様々な品を企画してきた、後藤さんをはじめとするリテイル商品開発グループは思案を重ねます。
「廃棄物を半分にするために、物販を担う私たちがそこに貢献していくためには、大きく2つの方法があります。ひとつは、使い捨てされているものをリユースできるもので代替していくということ。タンブラーの販売もそうですよね。もうひとつは、廃棄物をリサイクルしていくという観点です」(後藤さん)
創業以来、スターバックスではお客様にタンブラーなどをご持参いただくことで、使い捨て資材の廃棄を削減していく活動に取り組んでいました。そこからさらに50%削減という目標──。その結果、新たに行き着いたのが、廃棄物自体を再利用して新しい商品を生み出していく、という考え方でした。
「スターバックスの店舗から出る廃棄物にはどんな種類があるのかをチームで洗い出していきました。コーヒーを抽出した後の豆かすがあったり、牛乳パックがあったり──」(後藤さん)
スターバックスの中で「ループアクション」と名付けられた、廃棄物を再利用して新しい商品として店舗で販売していく活動は徐々に本格化していきます。
上述の「コーヒーの豆かす」はキャロットケーキに、「牛乳パック」はノートになって、店舗で販売されることになりました。そしてもうひとつ、後藤さんたちがアップサイクルする対象として着目したのがタンブラーでした。 「これまで販売していたタンブラーは、各ご家庭で不用になった時に捨てられてしまっていました。様々なパーツがついているので、プラスチックのリサイクルに回すことが難しい製品なんです。そこで、私たちが回収して新たな商品として命を吹き込むことができないかと考えました」(後藤さん)
約7,000本のタンブラーが、コースターに
スターバックスで販売する商品はさまざまですが、あらゆる視点から考え抜いた結果、後藤さんたちは飲み物の下に敷くコースターを創ろうという発想に至りました。
タンブラーがコースターへと生まれ変わり、再びスターバックスが提供することで、日常のコーヒーシーンに戻ってくる。そんな絵図を描いたのですが、その実現は簡単なものではありません。
「コーヒーの豆かす」や「牛乳パック」は店舗から出た廃棄を直接リサイクルに回すことができますが、タンブラーは一度お客様の手にわたっているもの。つまり、お客様から回収するための仕組みから整えなくてはいけない点が、これまでのループアクションとは大きく異なります。
「通常の商品開発は、どういうデザインにしようかというような議論から始まります。しかし、今回の商品については、タンブラーの回収方法を考えることから始まりました。これは私たちにとっても初めての経験でした。そして何より難しかったのが、お客様に回収を呼びかけて、どれくらいの量が集まるかがわからないという点です」(後藤さん)
通常の商品開発において、原材料となる資材の調達の量がこれほどまで不確定であることはありません。予測の難しいプロジェクトの実行にあたり、後藤さんは最終的に「あらゆるケースをシミュレーションし、複数プランを用意する」ことで歩みを進めます。
「まずはやってみよう」
2021年夏、スターバックスは全国約500店舗で約2ヵ月間タンブラーの回収を呼びかけましたが、その結果は驚くほどの反響でした。
「最終的に約2トンのタンブラーが集まりました。本数にすると約7,000本分に相当します。多くのお客様が私たちの考えに賛同してくださったのです。このタイミングで、まったくどうなるかわからなかったこのプロジェクトに、希望の光が差し込んだような気がしました」(後藤さん)
スターバックスを巡る、サステナブルな旅
店舗で回収されたタンブラーは、各地域にある倉庫に集められ、一旦栃木県の工場に送られます。そこでタンブラーの各パーツを分別、粉砕、洗浄した後、加工しペレタイズすること(※プラスチックを加工しやすいよう小さな粒状にすること)で、再利用可能なプラスチック材ができあがります。
この最初の工程となる分別がかなり大変な作業となります。プラスチックの中でも種類別に素材を分けるほか、底面についているゴム製パッキンや二重構造の中にある紙などをきちんと取り出さなくてはならず、今回これらはすべて手作業で行われました。
そして、なんとかプラスチックのペレットができあがると、千葉県にある成形工場に送られ、新商品のコースターが完成します。
今回の商品は4枚入り1セットのコースター。「ループアクション」に賛同いただいた皆さんの約7,000本のタンブラーがコースターに生まれ変わり、アースデーに合わせスターバックス店舗とオンラインストアで発売されます(2022年4月20日)。
「環境問題へのアプローチも大切ですし、ビジネスとしても成立していることで、活動自体をサステナブルなものにすることができます。お客様が、欲しいなと思って買ってもらった商品がサステナブルだった、というのが理想ですね。また、今回多くのお客様に参画いただいて1つの商品をつくりあげるという初めてのプロセスを実現できたことも自分自身にとって収穫でした」(後藤さん)
スターバックスでの商品開発を「単なるもの作りじゃないのが、面白い」と語る後藤さん。商品にストーリーを乗せる、そして、そのストーリーを店舗のパートナーを通じてお客様へとつないでいく。それこそがスターバックスの商品開発の醍醐味なのだそう。
「スターバックスがハブになって、社会課題にお客様と一緒に取り組んでいく。そういうきっかけになれるような商品がどんどんと増えていけば良いなと思います。
今回の取り組みを通じて得た知見を生かして、今後は回収の拠点を500店舗ではなく全国の店舗へと広げたり、リサイクル商品のバリエーションを増やしたり、いろいろと活動の幅を広げていきたいですね」(後藤さん)
挑戦はまだ始まったばかりです。
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