弘前市内店舗のパートナーが結成!りんご隊の活動とは(青森県弘前市)


青森県弘前市内の店舗のパートナー(従業員)が結成した「りんご隊」。「青森のりんごを地元の人にもっとたくさん知ってもらいたい!」という想いを胸に、活動しています。りんごをより深く知るために、そして地域の人たちとつながるために、りんご隊が県内の店舗のパートナーとともに生産者を訪ねると聞き、同行しました。

一生懸命やればりんごが応えてくれる。りんご生産者の想い

30℃を超える暑さが続く8月のある日、りんご隊のメンバーと一緒に訪ねたのは、弘前市内でりんごを育てている今(こん)さんの畑です。この道52年の熟練で、9種類ほどの品種を育てています。このうちの「紅玉」が、スターバックスで毎年秋に発売するアップルパイの原料の一部となります。

今年は「青森県産 紅玉のカスタードアップルパイ」を9月1日(金)に発売します。使用するりんごは100%、青森県産の紅玉。パイ生地にシロップ煮の紅玉とさっぱりした甘さのカスタードが入り、酸味と甘みが絶妙なバランスの一品です。

青森県のりんご生産量は日本一で、ここ弘前市を中心とした県の中南地域が最も盛んです。りんご栽培は一年を通して、ほぼ手作業で行われます。冬は剪定、春は栄養を与えて病害虫から守るため肥料や薬剤散布。春から夏にかけて授粉や草刈り、袋掛けなどが行われ、夏の終わりごろからやっと収穫に入り、最盛期は10~11月。

とても手がかかりますが「おいしいものを消費者の皆様にお届けしたいという気持ちがあると、りんごが応えてくれる。一生懸命やったら応えてくれるのがりんごの魅力だな」と今さんは力強く言います。

今さんは毎朝、3町歩(約9,000坪)もある畑の木を1本1本見て回り、異変を感じたら虫眼鏡で葉を見るなど3時間かけて念入りに観察するそう。

「毎日同じように見えるけども、ひと回り大きくなったなとか、ちょっと葉っぱがおかしいなとか気付きます。木は生きているから、何を欲しがっているか木に聞いたらわかる」と、まるで自分の子どもを育てているかのような優しい眼差しでりんごの木を見つめます。

自然の営みのなかでりんごの木と向き合っていると、顕著に感じるのは気候変動による影響です。「今まで経験ないような虫が生まれてきたり、もっと南の方であったような病気が出たり。やっぱり温暖化だなと思っていますね」

今年は開花が例年より1週間ほど早く、夏場の雨が少ないためにりんごの実の成長が遅いそう。「葉っぱが丸まってくると、水を欲しがっとる」と、成長を促すために、広大な畑にホースで水を撒いていくというから、重労働です。

こうした作業の大変さを聞いて「どんな時にいちばん喜びを感じますか?」と問うりんご隊に、「やっぱり収穫の時期だな。大変だけど、結果が表れるからさ」と今さん。スターバックスのアップルパイは毎年食べているそうで、「いーよぉ、うめぇよ」という答えに、りんご隊からは歓声が上がります。

今さんの話に真剣に耳を傾けるりんご隊。収穫の時期を終えたら、スターバックスの店舗でアップルパイとコーヒーを楽しむパーティをする約束を交わしていました。

青森のりんごを終わらせたくない!りんご隊の想い

りんご隊の結成は2019年に社内で開催した、30歳未満のパートナーが日頃から抱いている疑問や課題意識、社会を変えるアイデアを発掘し、起業家精神を養うプログラム「Starbucks Youth Entrepreneur Action」への応募がきっかけでした。弘前さくら野店の山中さんを中心に、同店の福原さん、弘前公園前店の福澤さんと三浦さんの4人でスタートしました。

実家がりんご農家だけれど青森県のりんごが抱える課題をまったく知らなかったという山中さん。プログラムへの準備で父親をはじめ生産者の方々に話を聞くなかで、衝撃的な言葉を聞くことになります。

「弘前のりんごは、“終わりの始まり”が近づきつつある」

「りんご農家の平均年齢が65歳、青森県の男性の平均寿命は70歳代なので、引退する年齢の方がほとんど。さらに後継者が決まっているのは全体の2割ほどといわれています。とても衝撃を受けました」と山中さん。健康寿命を考えると現在の農家の人たちが現役で働けるのはあと数年という事実に、大好きなりんごがなくなってしまうかもしれないと危機感をつのらせました。

労働力も後継者も足りていないことが青森のりんごの課題。そう感じた1年目の活動は、農家へ手伝いに行くこと。でも、これは「失敗だった」と振り返ります。「知識も経験もないのに畑に行っても手伝いにならない。お店で働きながら農家さんの手伝いに行っていたので私たち自身も休みがなくて疲れてしまい、続けていくことができなかった」

そんな時に救いになったのも、りんご農家の方からの言葉です。

「あなたたちは、あなたたちのコーヒーという強みを活かしてがんばればいいんだよ」

この言葉が、心に刺さり、活動をシフトチェンジ。どのパートナーでも簡単に取り組むことができる活動を考えるようになりました。そのひとつが店舗でのりんご情報の発信です。

弘前さくら野店は地元のお客様が多い立地で、りんごの楽しみ方や、リアルタイムで畑の様子を伝えるコミュニティボードに多くの方が足を止めてくださいます。弘前市りんご公園から借りた様々な品種のりんごの写真も展示。

「農家になることだけでなく、広めること、食べること、買うことも応援。応援の仕方がいっぱいあることを広めたい」と山中さん。店舗の外での活動も検討中で、コロナ禍が明けたこれから活動は本格始動します。

今年のスターバックスのアップルパイは「青森県産 紅玉のカスタードアップルパイ」。商品名に地元の名前が冠されたことに4人はとても喜んでいます。4人に共通しているのは地元のりんごに誇りを持って「おいしい」と伝えたいという気持ち。大切なものをあたり前に大切にしていきたいという想いです。

アップルパイとコーヒーで過ごす時間に、少しだけ生産者やりんご隊の笑顔に想いを馳せてみてください。そして、自分の周りにある大切なものに心を向けてみませんか。

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スマトラ島で感じた、一杯のコーヒーの背景にあるもの。