スターバックスの持続可能な店舗設計 環境に優しい「グリーナーストア」って何?


2021年12月1日、環境配慮型店舗の国際認証「Greener Stores Framework」を取得した「グリーナーストア」日本1号店となる「皇居外苑 和田倉噴水公園店」がオープンしました。それから約2年が経ち、23年12月末で認証店舗は101店舗へ広がりました。

「グリーナーストアで大切にしているのは、環境に配慮したお店づくりであると同時に、そこで過ごすお客様、パートナー(従業員)にとって快適な空間であることを両立することです」と、機器の導入など設備面を担う杉山さん(店舗建設部)と、デザイン面からアプローチする柳さん(店舗設計部)。では実際、どのような取り組みが行われているのでしょう。ふたりに話を伺いました。

「Greener Stores Framework」とは?

Greener Stores Frameworkは、水の使用量、CO2や廃棄物を削減して環境負荷を低減した店舗づくりをする枠組みで、スターバックスと世界自然保護基金(WWF)とが共同策定したもの。グリーナーストアは全世界で25年までに10,000店舗を目指し、日本では22年10月以降の新店舗のほとんどがこの基準を満たしています。

Greener Stores Frameworkには以下の8つの基準があり、それぞれに細かい要件を設定。その基準を満たすことで従来の店舗に比べ、CO2排出量約30%、水の使用量約20%の削減を実現します(日本でのLEED認証取得(2010年)前の店舗との比較)。


それでは、一つひとつの基準を事例とともにひも解いていきましょう。

エンゲージメント

スターバックスには、新店舗のオープン時、サポートセンター(本社)から店舗へ引き継ぐイベント「G.I.F.T(ギフト)」があります。ディストリクトマネージャー(地区担当マネージャー)や設計担当者がお店として地域に果たしてほしい役割、デザインに込めた想いなどを共有する時間です。もちろんサステナビリティの面でグリーナーストアの取り組みや意義、知識も。パートナーがお客様に自分たちの言葉として、きちんと伝えられるようになることを大切にしています。

「G.I.F.T(ギフト)」の様子(ビバシティ彦根1階 ビバマルシェ店)

また、グリーナーストアで働くパートナーは気候変動の影響などを学ぶ「グリーナー エプロン プログラム」の受講が推奨されています。
「サステナビリティについて基礎的な共通認識を持つことで、パートナーとエンゲージしていくもの。例えば、なぜ水栓をきちんと閉めなければいけないか?というような、日ごろのアクションの理解や気付きにつながります」(柳さん)

エネルギー効率

洗浄や空調などの日本の機器は省エネに優れたものが多く、その中から適切なものを選んで利用しています。さらに日本では地域の気候の特性に合わせ、外からの暑さや寒さを遮る壁や屋根の仕様を用い、快適に過ごす空間を省エネルギーで実現。例えば北海道など特に寒い地域の店舗の窓に使用するペアガラス(二重構造ガラス)には、特殊金属膜が貼られた遮熱効果が高いものを採用し、暖房効果を高めています。店内の照明も、バーカウンターは作業のしやすさを、客席は各店のお客様の層によって適切な照明を選択し、それぞれに必要な光量にするルールを設けています。

「地域や店舗の特性に合わせたものを選ぶことでエネルギーをコントロールしつつ快適さを保っています。工事の時にもCO2が排出されるので、必要なものを必要なだけ使うことも大切な視点です」(杉山さん)

やわらかな日差しが入る客席(天王川公園店)
バーカウンターは明るく

水の管理

グリーナーストアは全店、また、そのほか多くの店舗でも導入されている手洗い用の水栓は、“小さな発電所”。センサーに手をかざして水が出た後は、水が落ちる力で発電し、その電力で水をさらに出しています。ほかにも、バーカウンターの中では一定時間水が出て、自動的に止水する水栓などの節水型水栓を導入。
「衛生面でも、店舗でのオペレーション面でも使い勝手を確認しながら、採用する機器を決めています。パートナーやお客様が“負担なく”節水できるものであることが前提です」(杉山さん)

”小さな発電所”

責任ある素材の調達

素材の調達には倫理性と安全性の2つの側面があります。倫理性とはトレーサビリティのある資材を使うこと。そして安全性では、シックハウスの原因とならない資材を利用するなど、健康に配慮した素材の調達を行っています。また日本ならではの取り組みに、店舗の建材や家具に国産木材を利用し、林業への貢献にもつなげています。
「リサイクルマテリアルの利用もそのひとつ。スターバックスの豆かすをリサイクルした壁材を使用している店舗も多くあります」(柳さん)

廃棄物の削減

資源の焼却や埋め立てされることを減らし、リサイクルを増やすためには、しっかり分別を行うことが大切です。客席のごみ箱は「紙類・プラスチック・食べ残し・飲み残し」の4つの分別で表示。リユース容器の返却場所も整えています。また、バックルームでも、店舗によりコーヒー豆かすのリサイクルのための分別を行っています。
「ほかにも、リサイクルしにくい素材をなるべく減らすなど、設計段階から建設時の廃棄物削減に配慮し取り組んでいます」(柳さん)

店内用グラスやマグの返却場所

再生可能エネルギー

全国のスターバックスの店舗で再生可能エネルギーを採用しています。例えば一部の店舗では屋根の太陽光パネルで発電し、店舗内や災害時の非常用電源として活用しています。ほかにも再生可能エネルギーには、水力、バイオマス、地熱などがあり、店舗のある地域の特性に合わせた電力を選択しています。
「地域のためにつくられているエネルギーを購入することで、店舗のある地域に恩返しにつながればと思っています」(杉山さん)

京都西大路店

立地基準

お客様の利便性や環境の観点から、駐車場などを含め各所に適した建物の構造にしています。そのひとつがヒートアイランドへの対応。建物に太陽光を吸収して地球を温めないよう、屋根に太陽光を反射しやすい資材を採用しますが、店舗の周囲に立ち並ぶ住宅やビルに反射し、光害につながる可能性も。そこであえて反射のスペックを基準よりも抑え、代わりに植栽面積の基準を設けています。植物は吸収した水分を葉から蒸発させる際に周囲の熱を奪い、ヒートアイランドの低減に役立ちます。
「日本特有の問題を解決するため、いくつかのソリューションを組み合わせて基準を達成する工夫をしています」(柳さん)

天王川公園店
道の駅みのり郷東金店

ヘルス&ウェルビーイング

主に音環境があります。布製のタペストリーなど柔らかな素材を使い、音を適度に吸収する工夫をし、ストレスなく過ごせる音環境を提供しています。照明も、居心地を意識して、店舗ごとに確認し調整しています。
「ほかの7つの基準も含め、全体を通してヘルス&ウェルビーイングを達成していく枠組みになっています」(柳さん)


この先の未来へ

スターバックスが大切にしてきた居心地の良さを損なうことなく、環境負荷低減を実現するグリーナーストア。その未来のカタチを、ふたりは次のように語ります。

「Greener Stores Frameworkはオープンソース化されていくことが想定されています、共感いただいた方々に採用され、将来的に一定水準のサステナブルなお店が増えていくことを願っています」(柳さん)
「時代によって社会が変わっていくなかで、考え続けていくことが私たちにできること。絶対的な正解がないので、みなさんに助けていただきながら最適解を探し続け、お客様への気づきのきっかけにもなれたらいいなと思っています」(杉山さん)

地球にある資源を消費する以上に還元していく“リソースポジティブカンパニー”を目指し、スターバックスはこれからも進んでいきます。

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薩摩の歴史を今に伝える白亜の洋館・鹿児島仙巌園店(鹿児島県)後編