伝統と革新が新たな歴史を刻む。JIMOTO Made・小倉織のバッグ
店舗のある地域の産業を用いて商品を開発・販売するJIMOTO Made。新作の「JIMOTO Made小倉織ミニバッグKITAKYUSHU」と「JIMOTO Made小倉織ミニバッグMOJIKO」が福岡県北九州市の店舗限定で4月24日(月)に発売になります。縞のグラデーションが美しいミニバッグに込められたストーリーを追いました。
骨董品店での出合いから始まった小倉織の新たなストーリー
福岡県北九州市は日本海や瀬戸内海に面し、中央部には国定公園に指定された山間部もある自然豊かな都市。小倉織(こくらおり)は、同市に江戸時代から伝わる綿織物。先染めした木綿糸で織り、丈夫で滑らか、そして美しい立体的な縞模様が特長です。
1600年代から作られていた小倉織は、江戸時代には武士の袴や帯に用いられ、明治期にはバンカラな夏の学生服として全国的に人気となりました。300年以上続いた歴史は時代の流れから昭和初期にいったん終わりを告げましたが、染織家・築城 則子さんが1984(昭和59)年に手織りで復元・再生させました。
築城さんは市内の骨董品店で小倉織の端布(はぎれ)に出合い、濃紺、白、藍、青の美しいグラデーションとつややかな質感に魅了されて小倉織を研究。自身で染めた糸で何度も手織りし、小倉織の新たな歴史が始まったのです。
「小倉織ミニバッグKITAKYUSHU」と「小倉織ミニバッグMOJIKO」は、築城さんがデザイン監修をする機械織の小倉織ブランド「小倉 縞縞」の生地で作っています。
縞のグラデーションの美しさの理由
小倉織の魅力は、プリントではないからこその立体的な縞柄。この美しいグラデーションは、どのように生まれるのでしょう。北九州市内にある生地を製造する織物工場を訪ねました。
美しさの秘密のひとつは、糸にあります。
監修の築城さんは草木染の糸を用いて手織りで作品作りを行う染織家。小倉 縞縞の生地には、草木染ではないものの、木や葉を使う草木染の日本ならではの自然の色にできるだけ近づけて染色された糸が使われています。幅広い濃淡の糸があり、それがグラデーションを生む要だそう。
もうひとつは築城さんの緻密なデザインをもとに丁寧に織り上げること。
どの色を何本並べるかまで細かなデザインをコンピューターに入力し、整経機(せいけいき)で経糸(たていと)を並べます。小倉織は一般的な織物の2倍以上の経糸を用いることで密度が高くなり、緯糸(よこいと)が見えないため、経糸の並びが縞柄として生地に現れます。また、高密度な上、2本の糸をよった双糸(そうし)を使うことで丈夫な生地になるのも特長です。
巻き終わった経糸は織機に移され、糸一本一本を丁寧にセット。すべての糸をコントロールしながら、緯糸が織り込まれて生地になります。
織り終えると、傷や糸の飛び出しがないかなどをチェックする検反に。人の目と手の感触で確認した後、生地を仕上げする洗いの工場に出して完成となります。
見学している間も、織り具合を確認したり、機械に糸をセットしたりと、職人たちが動き回り、機械織といっても人の手が多く入っていることがわかりました。
「糸の色や数など整経機へのデザインの入力は縞柄の肝になるので、とても気を使います。1つのデザインで2時間ほどかかるものもあり、それをダブルチェック。機械織とはいえ手作業もたくさんあるので、規模が小さい工場だからこそ、丁寧に作ることを心がけています。」と、工場長の三満田 巧さん。緻密なデザインと、職人たちの丁寧な作業で、美しい縞が生まれていました。
革新を恐れず、時代に合ったモノづくりを
「縞の表現は無限。色が1本違えば、違う表情になるんです」と小倉織の魅力を語るのは、同ブランドを手掛ける会社・小倉縞縞 専務取締役の築城弥央さん。2007年のブランド始動以来、手織りよりも幅広の生地を作ることができる機械織の良さを生かし、雑貨など日常に取り入れやすいアイテムのほか、インテリアや空間プロデュースなども展開しています。
弥央さんは、小倉織にとって革新を恐れないことを大切にしていると言います。
「小倉 縞縞がスタートしてから15年の間にも、世の中に求められているものがめまぐるしく変わってきていると感じています。伝統に寄りかかりすぎてしまうと、革新に消極的になってしまう。小倉織が悲しい歴史をまたたどることのないよう、伝統を守っていくには新しいチャレンジが必要だと考えています」
そんな小倉織の新たなチャレンジのひとつが、スターバックスと一緒に開発した今回の「小倉織ミニバッグKITAKYUSHU」と「小倉織ミニバッグMOJIKO」です。
北九州市の自然、門司港の歴史をイメージした2種のバッグ
「地元を代表する小倉織が絶えることなく、いつまでも地元の伝統工芸として愛され、未来につないでいきたい」
そんな想いを込めて、日常生活の中で使いやすいバッグを商品化しました。ミニバッグには内側にスターバックスのペーパーカップ型のポケットが付いていて、そのポケットに折りたたんでバッグを収納できるパッカブルなデザイン。生地は、市内のスターバックスの店舗パートナー(従業員)からヒアリングした北九州と門司港のイメージをもとに選定しました。
KITAKYUSHUは北九州が誇る自然と、親しみやすい人柄をイメージし、明るいグリーンベースの縞柄に。綿の経糸に、漂着ペットボトル由来の再生糸を緯糸に織り上げたサステナブルな生地です。
MOJIKOは、駅舎が重要文化財に指定されている門司港駅のある門司港地区を指し、レトロ、地元の顔といったイメージから黒とグレーのクラシカルで落ち着いた縞柄に。小倉織らしい縞柄で、地域に根付いている門司港のレトロ感を表現しています。こちらは門司港駅店でのみの販売です。
小倉織はとても丈夫なので洗濯にも強く、「経年変化でなめし革のような風合いが出てくるんですよ」と弥央さんが教えてくれました。使い込んで自分だけのミニバッグに育てていけるのも魅力です。
一片の端布との出合いをきっかけに、ひとりの染織家の情熱により息を吹き返した小倉織。地域の産業にスポットを当て魅力を伝えるJIMOTO Made。ふたつが出合って生まれたミニバッグが、新たな未来を運びます。