京都三条大橋店で楽しめる鴨川納涼床。歴史や文化、楽しみ方とは?


5月になると鴨川西岸に並ぶ「鴨川納涼床」は、京都の夏の風物詩です。そのうちのひとつ、京都三条大橋店は、気軽に納涼床を楽しめる場所として毎年多くの人でにぎわっています。「夕涼みを楽しむ文化」から始まったという鴨川納涼床の歴史や魅力、楽しみ方などを、ストアマネージャー(店長)の堂畑さんと、京都鴨川納涼床協同組合理事長の田中 博さんに伺いました。

江戸時代から続く、涼をとりながら飲食を楽しむ文化

納涼床の始まりは江戸時代にさかのぼります。鴨川は見世物小屋や物売りでにぎわい、それに伴い茶店で富裕な商人が河原に席を設けるようになったのが、起源だといわれています。当時は浅瀬に床机を並べ「河原の涼み」と呼ばれたそう。夏に高床式の納涼床を出すのが定着したのは明治時代の頃。現在は5月1日から9月30日に二条大橋から五条大橋まで、約90の店が鴨川西岸に流れる人工水路・みそそぎ川の上に床を出します。

盆地にあることから夏は暑く冬は寒いといわれる京都で、川の上に床を並べて涼をとるのは、その土地に合った夏の楽しみだったのでしょう。「納涼床は、比叡山や東山を望む京都随一の景観を誇ります。鴨川の雰囲気の中、食事などをしながら夕涼みを楽しんでいただく文化です。木屋町通と納涼床とでは、気温が2~3℃違うんですよ」と、京都鴨川納涼床協同組合理事長の田中さん。

納涼床は高級過ぎるや入りづらいというイメージの時代もありましたが、昨今はレストランやバー、カフェなど納涼床が楽しめる店のバリエーションが増えました。京都三条大橋店はコーヒー一杯で利用できるので、納涼床が初めてだという観光客にも入りやすいと人気です。

「納涼床を知っていただく入り口として、スターバックスのようなお店はとても大切です。スターバックスに行って納涼床を体験してもらい、“じゃぁ次は食事に行こうか”とつながっていったらいいなと思っています」

納涼床体験の入り口に。

それを「役割のひとつだと思っています」とは、京都三条大橋店ストアマネージャーの堂畑さん。「働く私たちが納涼床に愛着を持ち、お客様に伝えたいと思っています。ですから、事前に歴史や文化をパートナー(従業員)に伝える時間を設け、納涼床の期間はコンシェルジュ的な役割を配置し、お客様からの質問にもお答えできるようにしています」

店同士のつながりで納涼床を運営

納涼床は京都らしい風情が感じられる反面、それを守る上で苦労もあります。国有地に床を張り出して営業を行うため、土木事務所の許可や京都府鴨川条例の遵守が必要です。納涼床自体の景観も大切にされ、手すりの高さやデザインのほか、屋根の設置はできず日よけは“よしず”を使うなどの細かな決まりも。スピーカーやマイクの使用、華美なライトの設置もNG。灯りは“新聞が読める程度の照度”と組合でも統一しているからこそ、夜の趣ある時間が過ごせます。

もっとも大変なのは、「雨天時の営業です」と田中さん。特に営業途中に雨が降り出すと、店内にお客様を誘導しなければいけません。「雨が降った時に床にいるお客様が店内に入れる分だけは、普段から室内の席は空けておくように組合からもお願いしています。隣同士の店で床を閉めるタイミングが違うとお客様の不満につながるので、近所のお店同士で連携されたりしています」

こうした店同士のつながりに助けられていると堂畑さんは言います。「“比叡山に雲がかかったら、じきに雨が降る”と隣のお店の方が教えてくださいました。隣のお店の方とは、そろそろ雨降りそうですよねとタイミングを相談しています」

連携ができるのも普段から店同士で顔を合わせているからこそ。組合では納涼床の期間中、みそそぎ川の清掃活動を行っています。「床から物が落ちたり風でゴミが飛んだりすることもあるんです。クリーンアップ活動は地域のみなさんとコミュニケーションの機会になり、結びつきが強くなりました」と堂畑さん。また、これをきっかけに、京都三条大橋店では通年でみそそぎ川の清掃活動を行うようになりました。

“見られる姿”も文化のひとつ

では、お客様は納涼床をどのように楽しんでいるのでしょう。3年前に店に着任した堂畑さんがいちばん驚いたのは「鴨川にお尻を向けてはいけない」という習わしだそう。その理由を「鴨川の景観を楽しむものなので、鴨川に背を向けないように各店が座席を設けています。鴨川とみそそぎ川の間にある遊歩道も近いので、そちらを歩かれる方々にお尻を向けるというのも失礼ですしね」と田中さんが教えてくれました。

京都三条大橋店では、より多くのお客様に納涼床の文化を楽しんでもらうため店独自のルールを設けて周知に努めています。「鴨川の景観を楽しんでいただくための納涼床なので、パソコンや勉強目的の利用はご遠慮いただいています。また、景観の観点から日傘の利用も控えていただき、代わりに真夏の日中は、早めに店内に入っていただけるよう注意喚起を行っています」と堂畑さん。

オープンテラスのカフェとは違い、あくまでここは「納涼床」。雨が降ってきたからと傘をさして納涼床に居座り続けるのも、暑いからと日傘をさすのも無粋なこと。納涼床は、床だけでなくそこを訪れる人を含めて文化なのですね。

最後に、納涼床のおすすめの楽しみ方をお二人に聞きました。

「5月は新緑、夏は大文字(五山の送り火)。9月は中秋の名月で東山から昇る月がまたきれいなんですよね。月によっても変わる景観と一緒に空間を楽しんでいただきたいですね」(田中さん)

「昼と夜、時間帯でも変わるので、一日を通して楽しめます。昼間はくっきりとした緑で、カモメやトンビが飛んできて、自然をエネルギーに変えられる空間。夜は明かりで幻想的な空間になり、いろいろな形のお月様が楽しめるのも魅力です」(堂畑さん)

移り変わる美しい景観を楽しみながら過ごし、河原を行きかう人からはちょっとした羨望が集まる納涼床。京都三条大橋店の23年の設置期間は5月1日(月)~9月30日(土)です。京都の粋な夏を楽しみに来てください。

スターバックス コーヒー 京都三条大橋店

営業時間:8:00-23:00

納涼床営業時間:2023年5月1日~9月30日 11:30~22:00

ご利用ルール:1テーブル最大3名様、1時間まで

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現代アートに出合う“共同アトリエ” のような京都BAL店