伝統と斬新な発想で生まれた砥部焼のマグがJIMOTO Made+に登場
スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京(以下、ロースタリー 東京)の開業5周年イヤーに合わせ、5月10日、「JIMOTO Made+」に4つの地域の工芸品が加わりました。そのひとつが、愛媛・砥部の「砥部焼」のマグカップ「JIMOTO Made+ 中予マグ ヨシュア工房296ml藍/白」です。伝統を大切にしつつ、新たな手法を取り入れてこのマグを制作する窯元を訪ねました。
地元産の陶石と呉須で表現される砥部焼
240年以上もの間、この地で焼き続けられている砥部焼は、陶石を主原料とする磁器です。江戸時代中期、砥石の産地だった砥部で、藩が砥石の屑を原料に磁器を生産させたことに始まります。現在でも地元でとれる陶石を原料とし、際立つほどに真っ白な磁器に、呉須と呼ばれる青色の顔料を用いた手描きの絵付けが特徴で、1976年に国の伝統工芸品に指定されました。
現在、100ほどの窯元があり、その多くは小規模ではありますが、それぞれが伝統を守りながら個性ある焼き物を作っています。その中で砥部焼に新しい風を吹き込もうとしているのが、今回訪ねたヨシュア工房です。
「伝承と伝統は違う」とは、2代目の竹西辰人さん。
「伝承は作り方を変えないで作り続けるもの。伝統は、受け継いできた技術や精神をもとに時代に合わせて作り方を変え、新しいものを生み出していくものだと思います」
ヨシュア工房の特徴は「ヨシュアブルー」と呼ばれる、深くも柔らかな青色です。竹西さんが幼いころから親しんできた瀬戸内の海の色だそうです。そして、手描きの絵付けがされる砥部焼において、絵付けを行わず「吹染め技法」で表現します。
「JIMOTO Made+ 中予マグ ヨシュア工房 藍/白」は、竹林をイメージして呉須を斜めに吹き付けています。これは、かつてロースタリー 東京のある東京都目黒区が孟宗竹の産地だったことにちなんだデザインで、ロースタリー 東京らしいモダンな雰囲気をまとったマグになっています。
革新から生まれたヨシュアブルー
砥部焼は地元産の陶石に土などを混ぜて作られた坏土を、真空土練機で空気を抜きながらこね、成形、乾燥、削り、素焼き、施釉、本焼きを経て完成します。「JIMOTO Made+ 中予マグ ヨシュア工房」は、石膏型で成型をし、生乾きのところでコテなどを使って削り、厚みや口元の丸みの調整、高台など、形を整えていきます。
柄を付けて乾燥したら、920℃で9時間素焼きします。
素焼きを終えると、呉須を使って施釉します。
呉須とは、鉱石を原料とした陶磁器用の青色の顔料のことです。専門業者から購入することもできますが、ヨシュア工房では研究を重ね、コバルト、ニッケル、マンガンなど10種類の原料を独自にブレンドしてヨシュアブルーを完成させました。納得の色になるまで、なんと10年もの年月がかかったといいます。
焼成前の呉須は、チョコレート色です。透明のガラス釉を塗り重ねることで焼成時に化学反応が起きて青が引き出され、呉須を塗っていないところは、坏土本来の真っ白な色が現れます。
「同じ呉須を全体に塗ると、器の外側と内側で焼成後の発色が異なってしまいます。ですから、同じ色になるよう、外側と内側でブレンドの異なる呉須を使っています」
呉須の吹き付けに板金などで使われるスプレーガンを使用するのも、竹西さん独自の工夫です。竹西さんがスプレーガン握ると、シューッという音と共に呉須の粒子がマグに吹き付けられていきます。
一見簡単そうにも見えますが、「3往復ほど重ね塗りしますが、ムラが出ないように常にガンも器も動かしながら吹き付けます。スプレーガンの口径、呉須の粒子の細かさによっても変わって来るので、どういう形がベストかを探るのに5年ほどかかりました」と、その苦労を語ります。
特に斜めのデザインは、塗料が垂れやすいため難しく、通常3回ほどで終える吹き付けを、薄く10回も重ねていきます。形、デザインなどにより微調整を加えていくのはさすがの職人技です。
こうして施釉を終えたマグは、1,260℃で16時間本焼きされ、つるりとした磁肌に深い青のグラデーションが浮かび上がります。
アイデンティティが伝統を守り、新しさを取り入れる
現在はこうした吹染め技法をメインに砥部焼を制作していますが、先代までは「圭仙窯」の名で絵付けの砥部焼を制作していたそうです。砥部焼で吹染め技法というこれまでにない手法を取り入れるには、“これが砥部焼である”というアイデンティティをしっかり持たなければいけなかったと竹西さんは語ります。
「同じ磁器の有田焼に比べ、砥部の陶石の性質はやや陶器っぽさがあります。だからもっと陶器に近い磁器があっていいのではないかと考えました。だからまずは、砥部の陶石を使っていることが大切。そして砥部焼の特徴である呉須の色にオリジナリティを追求しました」
その想いと技術の積み重ねの線上に、今があり、JIMOTO Made+のマグがあります。
「この器で、普段飲んでいるコーヒーに幸福感を少しプラスできれば、とてもうれしい。と共に、砥部焼を知ってもらうことができれば、この地域にもいろいろなプラスが生まれるのではないかと思います」
■JIMOTO Made+
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