土と釉薬で表現する優しい風合いを伝えるJIMOTO Made+萩


スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京(以下、ロースタリー 東京)の「JIMOTO Made+」は、文化、職人の情熱や技術とともに各地の工芸・産業を全国へ発信する商品シリーズです。5月10日に4つの新作が同時に登場。そのひとつが山口県萩市で作られている萩焼のマグカップです。「JIMOTO Made+ 萩マグ薄藍355ml」「JIMOTO Made+ 萩マグ薄桜355ml」を作ってくださっている工房を訪ねました。

御用窯として始まり、400年の歴史を紡ぐ萩焼

萩市は、城下町として発展し、幕末には多くの志士たちを排出した土地です。往時の区画や武家屋敷が今も残る風情ある町並みで、冬には、あちこちの白壁から夏ミカンが顔を出します。

萩焼は、江戸時代初期に李朝から招いた職人が、藩の御用窯として高麗茶碗の茶陶を制作したことに始まります。釉薬と土の収縮率の差によって生まれる「貫入(かんにゅう)」というひび割れがあり、使い込むうちに茶渋などが浸透して趣が変わり「茶慣れ」「萩の七化け」といって珍重されてきました。以来、400年以上育まれ、今では国が指定する伝統的工芸品のひとつです。

萩焼に使う粘土は、耐火度が高く焼き締まらない特徴があるため、ほかの陶器に比べ軽くて吸水性が高く、土の風合いの残る柔らかな感触が手に伝わってきます。絵付けなどの装飾はほとんど行われず、土と釉薬の組み合わせや焼成方法で表現される、素朴な表情が魅力です。

今回訪ねた萩陶苑の創業は約50年前。伝統技術に機械工程を組み合わせた自社一貫生産ラインを構築しています。創業当時は萩市が観光地として注目を集め土産としての需要が高く、100ほどの窯元があったといいます。しかし、「現在はその半分ほどに減少しています」と、営業企画課の池田めぐみさん。

パートナーに工房を案内する池田さん(左)

「地元では当たり前の萩焼も、ほかの地域での知名度は高くありません。萩焼では白萩と呼ばれる釉薬の白や、姫萩と呼ばれる土の色を生かした淡いピンク色が有名ですが、萩焼を知ってもらうために、新しい色への模索を続けています」と、萩焼を未来へつなぎたいという想いは強く、萩陶苑では新しい感性を織り交ぜた美しく使いやすい萩焼を作っています。

萩焼との出合いを生む2色のマグ

そうした萩陶苑の挑戦のひとつとして生まれたのが、今回の「JIMOTO Made+ 萩マグ薄藍355ml」と「JIMOTO Made+ 萩マグ薄桜355ml」です。

コーヒーのアロマを感じられるよう、コーヒー豆のような丸みのある形状に。裏側のマグを支える高台には、一部を切り取った「切高台(きりこうだい)」を施しています。一説には、萩焼の始まりが御用窯だったため、お殿様が使用するものと区別するために刀傷を入れたといわれているそうです。

釉薬で表現されたブルーからパープルのグラデーションが美しいのは、「萩マグ薄藍」。ロースタリー東京の夜のテラスや店の前を流れる目黒川をイメージしています。「萩マグ薄桜」は目黒川の桜並木をイメージ。化粧掛けという技法で生まれたこの淡いピンクは、萩焼らしさの象徴でもあります。

土と釉薬、温度で表情を変える萩焼

萩焼のこの美しい色合いを生む大きな要素のひとつは、土です。同じ釉薬を施しても粘土により焼成後の発色が異なるので、絵付けのない萩焼にとって土は、色合いに大きく作用します。

練られる前の土

主に使われるのは、基本となる灰白色の大道土、鉄分を多く含み色彩を豊かにする茶褐色の見島土、大道土の粘度を抑える黄色い金峰土の3種類です。JIMOTO Made+の商品に主に使われているのは大道土と見島土で、ブレンドの割合を変えて色のベースを調整。萩マグ薄桜は、大道土を多めにして白味の強い土に。萩マグ薄藍は、見島土を多めにして砂を加えることで青味のある土にしています。

そしてもうひとつは釉薬です。これまでの萩焼にはないブルーやグリーンなどの器を生み出している萩陶苑。工房の一画には、色のレシピが貼られた釉薬の樽がズラリと並び、“萩焼の未来のために新しい色を”という想いがあふれています。萩マグ薄藍は、これらのうちひとつの釉薬を内側と口元に施し、全体にガラス質の透明の釉薬をかけ、焼成時に溶け合ってグラデーションが生まれます。

萩マグ薄桜に用いられるのは、化粧掛けという技法です。釉薬ではなく、化粧土と呼ばれる液状の土を薄くかけて色を表現します。マグを化粧土に浸した後、ノズルの先から空気が出る「エアー」と呼ばれる機械を周囲にぐるりと当ててそれを飛ばします。飛ばすことで濃淡ができ、それがグラデーションになるのです。“萩焼本来の土が持つ優しい風合いを楽しんでほしい”と、素地の1/3にはあえて何も施していません。

一つひとつ個性のある萩焼が誰かのたったひとつになる

マグは石膏を使った型抜きの成形や素地の乾燥には一部機械を用いますが、施釉やマグの柄付けなどほとんどの工程は、職人の手作業です。

「職人たちは1日に何百個もの商品を手にしますが、お客様が手にするのはそのうちのひとつだけ。だから一つひとつの商品を、心を込めて作らなければいけないという想いで向き合っています」と、池田さんがその想いを代弁します。

ここに至るまでに作られたサンプルの一部を見せていただきました。

粘土は焼くと収縮しますが、使用する土や配合によって収縮率が変わるため、同じ型で成形しても土が異なると焼き上がった時のサイズが変わります。

「萩焼薄桜の萩焼らしい色を出しつつ、萩焼薄藍と同じ焼き上がりのサイズになる土の配合を探っていきました」と、土の配合、化粧掛けの有り無し、釉薬のレシピやかけ方、焼成温度などを様々な組み合わせで試し、今回の淡いピンクが完成したそうです。

池田さんは「今回の商品で新しい色のブルー、萩焼らしい色のピンク、この2色を表現できて、本当に良かった」と言います。それは、JIMOTO Made+から広がる萩焼の未来を願う想いから。

「この商品をきっかけにもっと伝統的な萩焼らしい商品や、個人作家さんの商品など、いろいろな萩焼を知っていただき、地元が盛り上がっていったらうれしいです」

萩焼のこれまでの歴史を感じる萩マグ薄桜と、これから先の未来を期待させる萩マグ薄藍。コーヒーを飲みながら、時々この色に、この色を生む土地に思いを馳せる。そんな時間を楽しんでみませんか。

■JIMOTO Made+
www.starbucks.co.jp/reserve/roastery/onlinestore/jimoto_made_plus/

thumbnail for さまざまな挑戦を続ける多様な女性パートナー(従業員)たちの物語

さまざまな挑戦を続ける多様な女性パートナー(従業員)たちの物語