桜島を眺めながらコーヒーを。受け継がれるパートナーたちの想い(鹿児島県)前編


鹿児島のシンボル、桜島を望む「鹿児島仙巌園店」。登録有形文化財「旧芹ヶ野島津家金山鉱業事業所」をリノベーションし、2017年3月にオープンしました。この店舗の誕生は、当時の鹿児島県下にある店舗のストアマネージャー(店長)たちの熱い想いがきっかけでした。そこに秘められたストーリーをお届けします。

島津家ゆかりの建物に誕生した鹿児島仙巌園店

鹿児島仙巌園店は、錦江湾に面した国道10号線沿いに立つ2階建ての白い和と洋を合わせた建築です。

店舗が入っている旧芹ヶ野島津家金山鉱業事業所は、鎌倉から明治時代にかけ南九州を治めた島津家の別邸、名勝・仙巌園に隣接していますが、もともとは1904年(明治37年)に鹿児島県北西部のいちき串木野市の芹ヶ野金山に、島津家の金鉱山事務所として建造されたものです。1986年(昭和61年)に現在の地に移設されました。エントランスの屋根に掲げられた「丸に十字」の家紋が、島津家ゆかりの建物であることを伝えています。

店内には旧芹ヶ野島津家金山鉱業事業所や薩摩藩の歴史的な写真などが飾られ、伝統工芸・薩摩切子からインスパイアされたグリッド(格子)をデザイン要素とした内装がモダンな雰囲気を演出しています。そして、店内の窓から望むのは、錦江湾をはさんで浮かぶ桜島の雄姿。この眺望こそが、この土地にスターバックスが誕生した大きな理由のひとつです。

きっかけは県内のストアマネージャーたちの想い

それは店舗誕生の1年ほど前にさかのぼります。当時、鹿児島県下の店舗のストアマネージャーたちが、「お客様に鹿児島の魅力を感じながらコーヒーを楽しんでもらいたい」という想いから、「桜島が見える店舗をつくりたい」という共通する願いを持ちました。県内各所をリサーチするなかで出合ったのが、この旧芹ヶ野島津家金山鉱業事業所です。

そのロケーションと建物に魅了され、店長のうちのひとりが、直接、建物を所有する島津興業さんにコンタクトをとったことがきっかけとなり、1年後の2017年に出店するはこびとなったのです。

「ストアマネージャーが新規出店の物件を探し、想いが出店につながるという前例を聞いたことがなかったので、とても驚きました」と語るのは、鹿児島仙巌園店の現ストアマネージャー・鶴園さんです。出店が決まった当時は、別の店舗で初めてストアマネージャーを任されたばかりのころ。地域の未来を考えて動く先輩ストアマネージャーたちの行動力、そしてその想いにこたえようとするサポートセンター(本社)の姿勢に感嘆したと言います。

「ストアマネージャーになりたてで、与えられた店を運営していくことに精一杯な受け身の状態だったのですが、この話を聞いて、自分にも何かできるかもしれない!という想いになりました」

鶴園さん自身、こうした想いに共鳴するのには理由がありました。鶴園さんは、鹿児島県大隅半島出身。入社後に配属された富山県にある「富山環水公園店」で、パートナーたちが生き生きと働く姿を見て、「都会の店舗とはまた違う、地元の人たちで盛り上げるブランド力がある」と感じ、その力を地元・鹿児島でも発揮したいという想いで戻ってきたのだそうです。

鹿児島に暮らす人にとって、桜島のある風景は「日常の一部」。しかし、温泉や農作物を育てる肥沃な大地などの恩恵もあれば、噴煙を上げて街に灰を降らせることもあります。

「子どもの頃は降灰の中、傘をさして通学していたこともありますね。どこからともなく灰が降って来るので、店舗の掃き掃除も大変です。それでも、嫌いになれないですね」と鶴園さんは笑顔を見せます。自宅からも、通勤の道からも、店舗からも、毎日眺めてしまうのだそうです。

こうした想いが地域の人の根柢にあるからこそ、「桜島を見ながらコーヒーが飲める店舗」は、地元の方々にもパートナーにとっても特別な場所になっています。鶴園さんは、鹿児島仙巌園店をこう語ります。

「地元の歴史を感じられ、桜島を見ながら、鹿児島に想いを寄せながら働ける場所です」

鹿児島が好き。その想いがサービスに表れる

かつてのストアマネージャーたちの姿に「自分にも何かできるかもしれない」という想いを持った鶴園さん。鹿児島仙巌園店を「やりたいことをチャレンジできるお店にしたい」と言います。

店舗の魅力を高めつつ、地域のためになることをと、パートナーたちは自ら行動。店舗内をお客様と一緒に回りながら見どころを紹介するストアツアーをしたり、コミュニティボードに鹿児島の歴史や文化などを紹介したりしています。コミュニティコネクションにも力を入れ、店舗近くのビーチの清掃や、小学生の勉強会への協力のほか、弦楽器や管楽器のミュージックライブを行ったこともあるそうです。

地元の人だけでなく、県内外や海外からの観光客も訪れる鹿児島仙巌園店。

「地元の方には日常使いの心地よさを、観光のお客様には非日常の空間を。でも、共通してベースにあるのは、鹿児島ならではの温かみのあるサービスです。パートナーの“鹿児島が好き”だという想いがそのままサービスに表れるので、パートナーたちが輝いて見えます」

ここで働くパートナーは約20人。オープン当初から働く川ノ上さんは、「どの店舗もレシピは同じだけれど、ここで飲むコーヒーがいちばんおいしいと言ってくださるお客様もいて、幸せを感じながら働いています」と言います。山下さんは、「この場所に、あり続けたい。お客様に帰ってきてもらえる場所でいたい」という想いを抱いています。先輩たちから引き継いだ情熱を胸に、今日もここで、温かなサービスと共にお客様をお迎えしています。

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[What is…?] 日本のごみの現状と課題:ごみを考える、ということ。