スターバックスの緑のストローが帰ってきた。飲み心地が良く、地球にもポジティブに。


スターバックスのストローが2025年1月23日(木)より沖縄県内の店舗で、3月以降に全国の店舗で、紙製から、生分解性のバイオマス度99%のストローに順次変更になります。この新しいストローは総合化学メーカー・カネカの「生分解性バイオポリマー Green Planet®」製。でも、生分解性って?と、ちょっと難しく感じますよね。そこで、製造方法や特徴などを、カネカGlobal Open Innovation 企画部の宅 佑奈さんにわかりやすく教えていただきました。

微生物の力で作られる「Green Planet®

飲み心地も良く、地球にもポジティブな新ストローは、植物などから生まれたバイオマス素材でできたプラスチックで作られています。その原料であるGreen Planet®の大きな特徴は「植物などのバイオマス原料で作られていること」「海水中や土壌で生分解されること」の2つ。まずは生産方法について伺いました。

Green Planet ®は微生物の力で作られる素材です。微生物がプラスチックをつくる…とはどのような仕組みなのでしょう。

「植物油を微生物に食べさせると、微生物がエネルギー源としてポリマーを作り出し、菌体内にため込みます。人の脂肪のようなイメージですね。それを取り出したものがGreen Planet®です」と宅さん。

しかもその微生物の大きさは、おおよそ1000分の1ミリなのだというから驚きです。

「ビールタンクで酵母を発酵させるようなイメージで、植物油などの原料と微生物を入れて温度や湿度を管理して微生物が増殖。微生物の中からポリマーを抽出し、きれいに精製します」

おおよそ1000分の1ミリの大きさの微生物から取り出したポリマーを加工しやすいように米粒ほどのサイズに加工して使用するのだそうです。この技術の研究がスタートしたのは1990年代前半で、量産化できるようになったのが2011年。30年もの歳月を経て蓄積された技術が、新ストローには詰まっているのですね。

ライフサイクル全体でCO2の排出を低減します

スターバックスでは石油由来のプラスチック製品の使用を廃止してCO2の排出削減につなげるため、2020年に紙製ストローの導入を始めました。今回Green Planet®製の新ストローへ変更するにあたり、スターバックスではCO2の排出削減について紙製ストローと比較検証しています。

「Green Planet®の原料は主に植物油。植物は大気中にあるCO2を吸収し光合成するので、その吸収量と焼却処分の際のCO2の排出量は、プラスマイナスゼロといえます。また、紙製ストローと比べて重量も半分ほどになるので、輸送や廃棄、焼却などに必要なエネルギー量も低くなります。Green Planet®の生産、ストローの製造や輸送などライフサイクル全体の負荷を計算して数値化した結果を比べて、紙製より環境負荷が低減できると評価いただきました」と宅さん。

土の中でも海水中でもCO2と水に分解されます

そしてGreen Planet®のもうひとつの大きな特徴が、「生分解性」。生分解とは、微生物の働きによりCO2と水に分解されて自然界に循環していく性質のこと。特に海水中でも生分解できるバイオプラスチックは少ないのだと宅さんは言います。

「Green Planet®は、土の中や海水の中で生分解されることが実証され、日本バイオプラスチック協会の『海洋生分解性バイオマスプラ』認証(※1)も取得しています。特に、温度が低く微生物の活動が弱いことから、生分解しづらいとされる海水中でも生分解性があることが強みで、海洋プラスチックごみ問題の解決にも貢献できます」

これは、実際にGreen Planet®製ストローの海水中での分解を検証した写真です。日が経つにつれて分解が進み、90日後には原型がなくほとんどなくなっています。

ですが、これはポイ捨てをしていいですよ、ということではありません。

「万が一、海など自然に流れ出てしまっても生分解されるということ。Green Planet®に限らず、ごみは適切な分別・処分をすることが大切です」

飲み心地も良く、地球にもポジティブなストロー

新ストローは、紙製ストローの課題であった時間が経つとふやけてしまうことがなく、フラペチーノ®などを最後まで楽しむことができます。このストローは、とても高度な技術で生まれているのだそうです。

「Green Planet®は固まりにくい性質の素材のため、薄く均一の厚さに加工するのがとても難しいんです。初めて製品化したのもストローでしたが、ストローメーカーと共同開発し、完成までに数年かかっています」

原料となるGreen Planet®には柔らかな成分と固い成分の2つの成分で構成されている素材で、どちらの成分を多く含むかで特性を異にすることができるそうです。そうした固さの異なる何種類ものGreen Planet®があり、作りたい製品によりそれらを数種類ブレンドし、加工に適した固さにするのだそうです。

「フラペチーノ®用の太い口径のストロー(※2)は、薄い上に太いので、製造過程でゆがみやすいという難しさがあり、技術の結晶なんです」と誇らしげな笑顔を見せてくれました。

「環境のためにできることは多少の我慢を伴うイメージがあるかもしれませんが、このストローは環境貢献と利便性を両立できる素材であり、環境のためにできることは我慢だけではないということが伝わったらうれしいです」

Green Planet®製ストローが全国のスターバックスで多くのお客様に体験いただくことで、宅さんは「たくさんの方に地球の未来を考えてもらうきっかけになるのではないか」と、期待の声を寄せてくれました。

飲み心地も良く、そして地球にもポジティブな新ストローでより豊かな体験をお楽しみください。

※1日本バイオプラスチック協会の「BP90(バイオマスプラスチック度90%以上)」認証取得。ライセンスナンバー:N0.1255。

日本バイオプラスチック協会の「海洋生分解性バイオマスプラ」認証取得。ライセンスナンバー:N0.0029。
一部、着色のために顔料を用いていますが、ストローは、海水中で生分解される素材を用いています。

※2太い口径のストロー(主に季節のフラペチーノ®に使用)は、25年4月上旬をめどに全国の店舗に導入。

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