スマトラ島で感じた、一杯のコーヒーの背景にあるもの。


スターバックスのパートナー(従業員)たちがコーヒーの生産地を訪ねて学ぶ、オリジンエクスペリエンス。2024年4月に日本を含むアジア圏の店舗から計約100名が集まり、インドネシア・スマトラ島へと渡りました。メンバーのひとり、中日本リージョナルコーヒーアンバサダーの西井さんが、群馬県下のパートナーへの報告会でその体験を語りました。西井さんが現地で見て感じた、一杯のコーヒーの背景にあるストーリーをお届けします。

知識が経験に変わる。生産地で実感した一杯のコーヒーへの責任

スマトラの伝統的な織物など民芸品を手に

島のほぼ中央を赤道が走る、インドネシア西部のスマトラ島。この地で小規模農家や加工業者などコーヒー生産にかかわる人や場所を訪ね、スターバックスのファーマーサポートセンター(コーヒー農園を支援する施設)でも知見を広げた西井さん。ブラックエプロンを6回取得するほど勉強熱心ですが、「わかったつもりでいたけれどわかっていなかったこと、イメージできていなかったことがあったと実感しました」と言います。

コーヒーの苗木の植林体験や収穫体験を通し、「当たり前だろうと思うかもしれませんが、『コーヒーは農作物なんだ!』と、改めて感じました」と西井さん。収穫体験では、2人1組で15分かけてもコーヒーチェリーを25粒しか摘むことができなかったそうです。

これはエスプレッソ一杯分の豆の量に相当します。お店でエスプレッソマシーンにかけると、抽出は20秒前後。豆を挽いて10秒で使わないと廃棄になってしまいます」

また、「今回よく耳にしたのは“Quality”という言葉です」と、誇りを持って大切にコーヒー豆を生産・加工されていることを伝えました。コーヒーチェリーは12時間以内に果肉除去をするなど品質維持のために時間を大切にしているそうです。

「1ショット(ショートサイズのスターバックス ラテに使用する1杯分のエスプレッソ ショット)に責任があることを、より強く感じました」

1粒のコーヒー豆に、現地の人たちの多くの労力が詰まっていることを実感するエピソードです。

そうした生産者をサポートする、スターバックスのファーマーサポートセンターの存在の大きさも改めて実感しました。

「もしコーヒー農家を始めるとすると、苗木を植えて収穫まで2~3年かかります。その間は利益が出ないのでとても不安ですよね。その不安な時期に、生活のために何を植えるべきかというアドバイスもファーマーサポートセンターでは行っていることを知り、スターバックスらしいサポートにうれしく思いました」

生産の様子や生活環境などを学ぶ中で、西井さんが特に強く感じたのは、コーヒー豆の生産が現地の人たちの生活に直結しているということです。

ここで西井さんから会場のパートナーに問いかけが。

「加工場にいた生産者の方に『コーヒーの生産をしていて、一番嬉しいと感じることは?』とお聞きしました。何と答えたと思いますか?」

以下の3つの中で、みなさんはどれだと思いますか?

①. より良い品質のコーヒーを、去年よりも多く収穫できた時

②. コーヒーを売って、子どもの学費を払えるようになった時

③. 海外で私たちが育てたコーヒーをおいしく飲んでもらえていると知った時

「正解は②です」と西井さん。

現地で質問した時は、③の答えが返って来ると予想していたそうですが、実際の回答にとてもリアルだと感じたそうです。

「“Quality”の次に現地でよく耳にした言葉は“Money”でした。『スターバックスに感謝している。だからもっとコーヒーを売って』と、言われたのです。そういう方々の環境を整えるために私たちができることはないのかな、と考える旅でした」

コーヒー豆のエシカルな調達が、生産者の生活を守る

生産者の方々の生活を知るにつれ、「C.A.F.E. プラクティス」についても深く考えさせられたそうです。

C.A.F.E. プラクティスは品質基準、社会的責任、経済的な透明性、環境面でのリーダーシップという4つを軸に、コーヒー栽培や生産者を守ることを目的としてつくられた、スターバックス独自の購買ガイドラインです。

コーヒーの生産者とそのコミュニティを守るために、スターバックスがサポートした事例を紹介してくれました。

「スマトラ北部のある学校にはトイレがなく、学生や教師はトイレのために数キロ先にある家に戻り、女性は毎月の生理期間中は学校に行けませんでした。そこでスターバックス ファウンデーション(※)のサポートを受けながら、安定した水道へのアクセス、手洗いの施設の設置、そして、学校の古いトイレを改修。彼らはまた、教育的なビデオを通して、学校での衛生を推進しました」

※ 1997年に設立された米国法501(c)(3)条による慈善団体です。レジリエントで持続可能なコミュニティづくりと被災地への支援を中心に、世界中の人々の暮らしを変革することによって人類がより強くなることを目指しています。

学校にトイレがないというのは、日本ではなかなか想像がつきませんよね。しかし、現地ではインフラが整っていないという現実があります。

「皆さんの近所にある公園のすごく古いトイレを想像してみてください。その想像よりもさらに整っていないトイレを、現地でお借りすることもありました。水道水は飲めませんし、現地の環境に慣れていない私たちは生野菜や果物も食べないようにという注意もありました」

ほかにも、食料を確保するためのコーヒー以外の作物の栽培、感染症対策のための衛生用品の提供など、生産者へのサポートを紹介。C.A.F.E. プラクティスの意義をこう見出しています。

「現地では生産者の顔の笑顔を見られたことがよかったです。その笑顔は何で作られているのだろう?と考えると、コーヒー豆がC.A.F.E. プラクティスに沿ってしっかりとエシカルに調達されているからこそ、生産者の方々も誇りを持ってくださっているんだと理解が深まりました」

一杯のコーヒーが届くまでにつながってきたバトンを届けるのが、バリスタ。

西井さんの話を聞いて、参加していたパートナーたちも、
「生産者さんに家族がいることまでイメージできていなかった」
「どれだけの人の情熱が込められているのか、それを伝えていきたい」
と、海の向こうの生産者たちに思いを馳せます。

報告会の内容をメモするパートナーたち

一杯のコーヒーが私たちの手元に届くまでに、生産者、コレクター(仲介業者)、加工業者、輸出業者など様々な人の手を経て海を渡り、お店まで届きます。このつながってきたコーヒーの最後のバトンを、お客様においしく楽しんでいただくこと。それがスターバックスのバリスタの仕事です。

西井さんは最後に、今回の旅を振り返りこう語りました。

「店でエプロンを着けていると、目の前のお客様やパートナーの幸せを考えるところで、想いが止まっていましたが、この旅でお店の利益がどういうところにつながっていくかを知ることができました。スターバックスは、生産者の生活の質向上を含めた持続可能なコーヒーの未来も考えている会社だということがわかりました。これからも自信を持ってコーヒーをおすすめしていきます」

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地元の文化を思いに乗せて。JIMOTO Made「KUTANI」(石川県)制作現場を訪ねて