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Ethical Sourcing

スマトラからコーヒーが届くまで①~土から始まる、コーヒー豆の最初の旅

2026年07月02日
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  • 7 min read
  • 2026年07月02日

スターバックスで創業当時からお客様に親しまれているスマトラのコーヒー。豊かなハーブや大地を思わせる風味が特徴のこのコーヒー豆は、多くの人の手と情熱を介して、私たちのもとに届きます。日本から飛行機で約10時間、遠く離れたスマトラ島から始まる、コーヒー豆の旅路をお届けします。

アラビカ種の栽培に適したスマトラの気候

赤道直下に位置するスマトラ島は、コーヒー栽培に最適な気候をもつ“コーヒーベルト”に位置しています。スターバックスで提供しているアラビカ種のコーヒー豆は、昼夜の寒暖差が大きな標高の高い土地で栽培されています。

高層ビルが立ち並ぶメダンの喧騒を離れ、バスで約4時間、山道を進んで標高1,000メートルを超えたあたりから、蒸し暑さから清涼感のある山の空気へと変わり、高山植物が鮮やかに彩る農園が姿を現します。ここはスマトラ北部、巨大なカルデラ湖「トバ湖」の周囲に広がる高原地帯です。

トバ湖

コーヒーを育てる生産者のほとんどは、0.5~1ヘクタール程度の小規模農家です。コーヒーノキのそばには、キャベツや玉ねぎ、豆類などの畑も広がっています。この土地では、コーヒーは家族の暮らしを支える重要な収入源であり、代々受け継がれてきた生活の一部です。そして、野菜は家族の食卓を支えるもの。この土地ならではの複合的な農業の営みの中で、コーヒーの旅は始まります。

農家の情熱と、それを支えるFSC

スマトラのコーヒーがお客様のカップに届くまでの工程は、大きく「農園」「ウェットミル(一次加工)」「ドライミル(最終加工)」「輸出・品質管理」「焙煎」「店舗」の6つのフェーズに分かれます。スマトラの最大の特徴は、農家が自らの農園で一次加工(果肉除去・部分乾燥)まで行うこと、そして「ウェットハル(半水洗式)」と呼ばれる独自の精製方法が用いられることにあります。そのそれぞれの工程で、C.A.F.E. プラクティスのトレーサビリティが機能しています。

C.A.F.E. プラクティスは、品質基準、社会的責任、経済的な透明性、環境面でのリーダーシップという4つを軸に、コーヒー栽培や生産者を守ることを目的として策定された、スターバックス独自の購買ガイドラインです。
さらにスマトラでは、2015年にスターバックスの農業支援の拠点・ファーマーサポートセンター(以下、FSC)を開設。農園に対し、コーヒー栽培の知識・技術・コスト管理のトレーニングを行うなど、持続可能な農業の普及のため、インドネシア全土の約14,000のC.A.F.E. プラクティスの支援を行っています。

例えば、コーヒー栽培には、適切な日陰をつくるシェードツリーの管理が欠かせません。1ヘクタールあたり約200本のシェードツリーを植え、40%ほどの日陰を確保することが推奨されています。以前はシェードツリーの概念や適切な施肥(せひ)を知らない農家が少なくありませんでした。しかしFSCを通じてその知識が広がり、シェードツリーを植え、肥料は土壌検査に基づいて不足分だけを補う方法に変わりました。これはコスト削減に加え、長期的な土壌の健全化につながっています。

農家への苗木配布プログラムにも、「代々続く土地でより良いコーヒーをつくりたい」という農家の情熱から、多くの人が積極的に参加しています。単に苗木を提供するのではなく、発芽管理から育苗まで一緒にトレーニングを行い、持続可能な農業を根本から支えています。

これらの支援は、FSCのスタッフにとっても、大きな喜びです。マネージャーのイタさんはこう語ります。
「苗木はやがて収入を生み、家族の生活を少しずつ良くしていく力になります。苗木という小さな贈り物が、未来の農家の家族の暮らしを変えていく…その成長を見届けられることこそ、この仕事の大きな喜びのひとつです。
そして、変わらないのは農家の方々の情熱と温かさ。家族のように迎えてくれる笑顔と優しさが、私をこの仕事に向かわせ続ける力になっています」

農園 ~完熟を見極め、即日加工を支える仕組み~

コーヒーノキは真っ白な花が散った後、緑色のコーヒーチェリーが実ります。コーヒーチェリーはゆっくりと色づき、ルビーのような赤色に熟したら収穫です。この収穫が、品質に最も影響します。

同じ房でも実が熟すタイミングは揃いません。たくさんの実の中から完熟した赤いチェリーだけを一粒ずつ手で摘み、未熟な実は後日に回すという「選択的収穫」を行います。熟度を見極め、虫食いを避けながら丁寧に摘む作業は想像以上に時間がかかり、毎日異なる木が、房が熟すため、収穫期の農家は雨の日も休まず作業を続けます。

そして収穫したコーヒーチェリーは、その日のうちに一次加工を始めなければなりません。なぜなら、時間が経つと発酵が進み、品質が落ちてしまうからです。

まずコーヒーチェリーを洗って異物を除去し、水に沈む重くしっかりと実った良質なチェリーだけを選別します。

ハンドパルパーや電動の果肉除去機などで外皮と果肉を除去し、パーチメント(薄い殻付きの状態)にして洗浄し、部分乾燥を行います。

その後、次の行程を行う施設「ウェットミル」まで、直接運ぶ農家もいますが、バイクすら所有できず運搬手段を持たない農家も多くいます。そこで重要なのが、集荷、運搬を行ってくれるコレクター(仲介業者)の存在です。近くのコレクターズハウスに持ち寄ることで、運搬業務を代行してもらえます。彼らがいることで、品質維持に欠かせない即日加工が実現しています。

ウェットミル ~独自の加工法から生まれる青い生豆~

ウェットミルに運ばれたチェリーは、スマトラ独自の「ウェットハル」によって加工されます。通常の水洗式では、乾燥した後に脱穀するのに対し、スマトラでは、“半乾燥”の状態で脱穀する点が最大の特徴です。雨が多く晴れ間が少ない気候の中で発展したこの技術が、結果としてスマトラ特有の風味を生み出しています。

農家から運ばれたパーチメント状態のコーヒーチェリーは、コレクターや地域ごとに分けた発酵タンクで、18~36時間の湿式発酵と洗浄を経て、ビニールハウスで乾燥させます。

少し土っぽい香りが残る豆は、1日半ほどで水分量を半分以下まで下げますが、その間も定期的に手作りのレーキで攪拌しながら乾燥のムラを防ぎます。ウェットミルには何棟ものビニールハウスが並び、1袋60㎏ほどある袋をかついで運んで乾燥させて…を繰り返す根気と体力のいる作業です。

そして、水分量の多い湿った状態で脱殻(ハル)することで、独特の青みがかった深緑色を帯びた生豆になります。英語で「グリーンビーンズ」と呼ぶように、通常、生豆の色は“緑”といわれますが、この色を“青み”と表現することこそがスマトラの豆を象徴する要素です。

脱穀後は、天日で3~5日かけて水分量を約12%まで下げる最終乾燥を経て、最終加工施設「ドライミル」へ運ばれます。現地の生産者は「ほかの産地がウェットハルを試みても、スマトラのような複雑な味わいは再現できない」と胸を張ります。スマトラの土壌の栄養素、気候、そして代々受け継がれてきた農家の手仕事…これらすべてが重なって初めてこの味が生まれるのです。

ここまでコーヒー豆が栽培、収穫されるまでの旅を追ってきました。次回は、ウェットハルを経た後のコーヒー豆が、私たちのカップへ届くまでを旅します。

Farm to Cup 特設ページ

スマトラの「農園の種」から「一杯のカップ」に辿り着くまで、たくさんの情熱と愛情でつながれたコーヒーの旅をご紹介します。

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