JIMOTO Madeの新作は森からの贈り物・天竜杉スリーブ付カップ


店舗のある地域の素材や伝統工芸など地元の産業を取り入れて開発し、そのエリアの店舗で販売されるJIMOTO Made。今回は林業が盛んな静岡県浜松市に「天竜杉スリーブ付カップ237ml」(税込11,150円)が誕生しました。11月14日(月)に浜松市内の13店舗で発売になります。商品に込められたストーリーを取材しました。

人々の生活を守る天竜美林のスリーブ

浜松市を流れる天竜川流域はもともと治水のために植林が始まり、古くから林業が盛んです。木材を生産するために人の手で管理して美しく成長させる人工林が広がり、それは奈良県吉野、三重県尾鷲に並び日本三大人工美林のひとつに数えられるほど。

また、森林の適正な維持管理の体制を認める国際的な環境規格・FSC認証の取得面積が、浜松市は市町村別で全国1位でもあります。環境に配慮しながら人の手で育てられた美しい森が、地域の人々の暮らしや産業を支えているのです。

天竜杉スリーブに使われるのは、FSC認証の森林で育った樹齢80年以上の良質な天竜杉。天竜川の流れをイメージした20角柱で木目が美しく、杉の華やかな香りが生きています。軽く、女性の手にもすとんと収まり、やわらかな木の感触が手のひらに伝わります。

カップの意匠は天竜川の荒波をイメージ。よく見るとミカンやウグイスといった市の花や鳥、コーヒーの花や豆など、浜松市とスターバックスの象徴が波の合間に隠れているのが面白いデザインです。

森を未来へつなぐために大切な、森林循環

市内の森に案内してくれたのは、スリーブに使う木材を提供している永田木材株式会社4代目・永田琢也さん。温暖で雪が少ないことからまっすぐに育つ天竜杉は、ほかのエリアの杉に比べて強度も高く、主に住宅を建てる建材として利用されています。空へと伸びる杉の幹をなでながら「すらっとまっすぐ伸びるから、どーんと柱を立てる五重塔のような建築が可能なんです。まさに適材適所ですよね」と語ります。


長さだけでなく木の太さ、木目の出方など、木の部位によっても用途が変わるので、捨てるところはないのだそう。天竜杉スリーブに使われている木材は節(枝の跡)が少なく、木目が美しい樹齢80年以上の木材。

「樹齢40年以上でようやく住宅の柱として利用できます。僕たちが使わせていただいている木材は、先人たちが守ってきてくれたもの。ずっと昔から林業家が大切に育ててきてくれた。これから植林される木は、数十年後の未来の資源となるんです」80年以上の歳月を経て森から私たちの手に届くスリーブには、先人の想いや自然の営みが凝縮されているのです。

また、国内の樹木は戦後の焼け野原に植林されたものが多く、樹齢70年前後のものが主流。一方、天竜地域は植林の歴史が古いため、樹齢100年以上のものから若いものまで、選択肢の幅が広いのも特徴です。しかし、こうした美しく豊富な木材を産出する浜松でも、担い手不足に悩まされているといいます。木材消費量は国産材よりも安価な外材(外国から輸入される木材)の方が多いのが実情です。美しい森林は「木を使うことで守られるんです」と、永田さんは言葉に力をこめます。

そこで永田さんが力を入れているのが「木育」です。製材所として木材を消費するだけになることに危機感を持ち、学校での講演、工場見学ツアーなど様々な取り組みを行っています。それは、山や木のことを知ってもらい、木のファンを増やして山の維持管理につなげたいという想いからです。

「植林し、枝打ちや間伐などの手入れをし、伐採をし、その木が流通することで山を守る資金が生まれます。でも国産材の消費が少ないとその山が維持できなくなり、後継者も生まれない。木を使うことは、山を守るサイクル“森林循環”のためにとても大切な要素です」と永田さん。

「スターバックスさんの多くのお客様に商品をきっかけに天竜杉を知っていただきたい。そして、これをきっかけに森林に関心を持ってもらい、将来の職業として林業をやってみたいと思う人たちが出てきてくれたらうれしい」と、期待を寄せています。

一つひとつ表情が異なる世界にひとつだけのスリーブ

伐採された木材は、製材加工されてから建築資材となります。日本では数か月で仕上がる人工乾燥が主流ですが、永田木材株式会社では伝統的な天然乾燥にこだわり、「出荷まで2~5年以上かかりますが、素材そのものの色つや、香りが残るんです」と永田さん。

そして永田木材株式会社で製材された天竜杉の角材をスリーブに仕上げるのは、ak-design 黒田家具工房の黒田英敬・美和子夫妻。ぬくもりがあり、色みや木目など一つひとつ表情が異なるのが木の魅力だと黒田さんは語ります。

天竜杉スリーブの開発は女性の手にも持ちやすいサイズ感になるよう、デザインや厚みをぎりぎりまで試行錯誤しました。そして、このスリーブを「世界にひとつだけのスリーブ」だと黒田さん。

製作は機械任せではなく、すべて“機械を使いながらの手作業”。

「特にこだわったのは、“人の手で作られたぬくもりを感じられるものに”ということ。面をサンドペーパーで削る際にあえて少し揺れのある線が出るよう加工することで、手作業の感触を残しています」

正確な寸法でフォルムを作った後、フリーハンド的に装飾を施しているため、手作業の味わいがあり一つひとつ表情が異なるのです。

家具などに使われる広葉樹に比べるとやわらかいため傷はつきやすいですが、使い込むほどに逆にそれが味わいになり、色もあめ色に変化していくのもこのスリーブの魅力。木面のけば立ちを感じたらオイルを塗ってメンテナンスし、大切に長く使い続けることでさらに愛着がわく。使う人それぞれが、育てていくスリーブです。

「日常のコーヒータイムで天竜杉を感じるきっかけを提供できることをうれしく思っています。みなさんのコレクションの中で末永く使っていただけたら」と、黒田夫妻は願います。

はるか昔より守られてきた豊かな森から届くスリーブ。手にする人との時間の中で、新たな物語をつむいでいきます。

 

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「目に見えにくい特徴も大切に」スターバックスが考える『NO FILTER』な社会とは?