「目に見えにくい特徴も大切に」スターバックスが考える『NO FILTER』な社会とは?


スターバックスが掲げるインクルージョン&ダイバーシティのメッセージに『NO FILTER』というものがあります。おいしいコーヒーをいれるためにフィルターは必要ですが、人との関係には先入観や思い込み、偏見といった「心のフィルター」を持たないことも重要だという思いが込められています。

一人ひとりが自分らしく生きられる居場所、そして自分の能力を生かし、持続的に活躍できる、そんな『NO FILTER』な社会の実現への想いを伝えるため、多様な性に関するスターバックスの取り組みやメッセージについて、LGBTQ+の当事者でもあるAさん、当事者の家族を持つアライ(理解者)のBさんの二人のストアマネージャー(店長)にお話しを伺いました。

一枚の手紙が実現のきっかけのひとつに「同性パートナーシップ登録制度」

Aさんは現在、トランスジェンダーのパートナーと暮らすLGBTQ+の当事者です。そして2017年に導入された「同性パートナーシップ登録制度」が導入されるきっかけの一人となったのがAさんでした。

「私はもともと、2011年からスターバックスでアルバイトとして働いていました。当時は、自分の周りだけでなく世間的にも周囲にセクシャリティをカミングアウトされている方は少なく、私も店舗のパートナー(従業員)に私自身を知ってほしい気持ちはあったものの、カミングアウトがきっかけで、今の関係性が変わってしまったり、聞いた相手が私と働きづらくなってしまったらどうしようと思うと、当時はセクシャリティをオープンにする勇気はでませんでした。」

セクシャリティをカミングアウトした上で働く、未来の自分の姿のイメージが持てなかったAさんは、同僚にもなかなかカミングアウトができずにいたそうですが、その後、社員登用へのチャレンジを通して、自分自身の人生に対してどうしたいかという思いが明確になり、社員になる際に提出する家族情報の書類に「同性パートナーを家族として登録してください」と想いを込めた一枚の手紙を添えたのです。

それをきっかけにAさんは徐々に周囲に伝える機会を考えるようなり、社員になって異動した店舗の当時のストアマネージャーが多様性を大切にする人だったことから「この機会に、もっと私のことを知ってもらおう」と、自分自身について打ち明けます。

「カミングアウトすることには緊張が伴いました。けれど、そのままの私を自然に受け入れてくださいました。アルバイトの頃にパートナーと結婚式を挙げたことも話すと、当時は結婚休暇という制度の適用がなかったにもかかわらず『せっかく結婚式を挙げたのなら、新婚旅行に行きなよ!結婚休暇を申請してみよう!』と言ってくれたんです」

その時は制度としての結婚休暇を取ることはできなかったけれど、思わぬ話を聞くことになりました。「あなたがあの時に書いた手紙がきっかけのひとつとなって、新しい制度が作られるみたいよ」と。

自分らしく働くためにどうしたらいいのかと悩んだ末につづったAさんの言葉は、サポートセンター(本社)にきちんと届いていたのです。そして「同性パートナーシップ登録制度」が導入されることになり、のちに結婚休暇も適用されるようになりました。

「この出来事があったからこそ、変化を恐れるだけではなく店舗の仲間に対しても自分から行動してみようと思えるようになりました。私のことは見た目だけではわかりづらいと思いますし、自分から開示しなければいつまでたっても知ってもらえません。今でもカミングアウトすることには勇気が伴います。けれど、私が自身のことにたいしてオープンにし、自分らしく働くことが、いつか誰かの支えになったり、多様性について考えるきっかけになったりするかもしれないと思い、店舗の仲間や同じ地域のストアマネージャー達にはその想いとともに打ち明けています。」

制度が浸透し、同僚たちにも理解が深まっていく中で「なるべく言えるタイミングで伝えていこう」という姿勢に変わっていきました。

見守ることの大切さと、難しさ

もう一人のストアマネージャーであるBさんは、4人の子どもの母であり、子どもの1人がLGBTQ+の当事者です。アルバイトからスタートしたBさんは、そもそも「誰もが自分らしくいられる居場所をつくる」というスターバックスの価値観や文化に強く共感し、ずっと働いてきたそうです。

「私の第一子は生まれた時の性と自認する性が違います。中学生のころからなんとなく気づいてはいたけれど、受け止められる自信がなく、はっきり聞いてしまうのが怖いと思っていました。でもスターバックスの「同性パートナーシップ登録制度」が始まったことなどを知ったあたりのタイミングで、第一子からホルモン剤を投与して準備しているというカミングアウトを受けて。もちろん驚きはしましたけれど、会社での多様性に対する考え方や制度への理解もあったからこそ、第一子が自分らしく笑顔で生きていけるのであればと考え、『私はあなたの味方だよ』と伝えられたのだと思います」

向き合うというよりも、ただただ受け入れることがBさんのスタンス。自分自身が当事者ではないからこそ、子どものすべてを個性として受け入れると話します。

「あるときから、第一子がパートナーを連れて家に遊びに来てくれるようになったんです。一緒に来てくれるということは、頼ってもいい存在と思ってもらえた証拠かなと思っています。やっぱり親だから、助けたいとか、守りたいとか思ってしまいますが、私が心配することで逆に重荷になってしまうかもしれないし、辛ければ自分から言ってくるとも思っています。人によってどう支えてほしいかは違うもの。第一子は見守ってほしい人だと思うので、私にできることはただ見守ることだけ。でも、いつでも助けられる状態にはしています。『見守り隊』ですね」

そもそもBさん自身は、第一子に限らず「お互いを心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化を作る」というスターバックスの価値観を、4人の子育てに活かしてきたと語っています。

「LGBTQ+がフォーカスされやすいけれど、多様性を受け入れるというのはマイノリティだけではなく、考え方が自分自身と少し異なっているとか、障がいがあるとか、どんな方も全てひっくるめたことだと思うようになりました。違うということが、私との関係を変えてしまうほどの影響を及ぼすことはないと思うから、人と違っていてもいいんだよと、家族にも同僚にも伝えています。できないことの否定から入るのではなく、できることを認めて伸ばしていく。自分だけの価値観を押し付けず、得意なことも苦手なことも合わせて『ひとつのチーム』ですから」

ひとり一人を尊重し、その輪を広げる

スターバックスでは多様なパートナー(従業員)たちが自分らしく働ける環境づくりとして、2017年から「同性パートナーシップ登録制度」「性別適合手術のための特別休暇制度」を導入。2020年からは多様な性についての正しい知識を広げるための出張授業などを行う「レインボー学校プロジェクト」の実施を行ってきました。

2024年6月1日現在、12名が「同性パートナーシップ登録制度」に登録。レインボー学校プロジェクトでは、AさんやBさんをはじめ、これまでに50名ものLGBTQ+の当事者やアライであるパートナー(従業員)などが講師として登壇しています。

また、スターバックスとして2018年に初めて販売して以来、毎年『NO FILTER』のメッセージを表現したタンブラーを販売しています。2023年からは店頭での販売も開始し、より多くの方へ『NO FILTER』のメッセージを伝え、タンブラーを通してアライであることを表現していただけるようになりました。

Bさんは日々働く中で、自分だからこそ伝えられるメッセージは何かを考えていると言います。
「『NO FILTER』のタンブラーを手に取ってくださるお客様がいたら、声をかけて背景をご説明するよう意識しています。『かわいい』というだけで終わらせないことが私たちのミッションだと思っています。店舗の仲間たちにはアライの仲間を増やすことに力を入れていることを伝えていますが、LGBTQ+だけでなく、いろんな人たちが認め合うことが必要だと思うのです。私のような存在が悩みを持っている人たちを助けられるきっかけになるかもしれないし、店舗でもお客様のご要望にできるだけ寄り添うことも多様性を認めることにつながると思っています」

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