地元の文化を思いに乗せて。JIMOTO Made「KUTANI」(石川県)制作現場を訪ねて  


各地域の文化や人とのつながりを大切にしたいという想いから生まれた『JIMOTO Made』。日本各地でその土地の産業や素材を取り入れたカップなどの商品を開発し、地域限定販売しています。

石川県の伝統工芸・九谷焼(くたにやき)を取り入れた「JIMOTO Made KUTANI」(以下、KUTANI)もそのひとつ。能登半島地震の発災から半年。地震の被害を受け、しばらく製造休止を余儀なくされた工房も数多くあった中で、「地元の文化をもっと知ってサポートしたい、そしてその魅力をお客様に伝えていきたい」と、石川南地区を担当するディストリクトマネージャー(地区担当マネージャー)と県内のストアマネージャー(店長)たち8名が「KUTANI」を作る工房を訪れました。

様々な工程を経て誕生する「KUTANI」 

石川県南部加賀エリアで生産される九谷焼は、緑・黄・紫・紺青・赤の五彩を中心とした鮮やかな色彩が特徴です。現代のデザインと九谷焼の伝統様式が融合した「KUTANI」は、2017年に『JIMOTO Made』のラインナップに加わりました。それぞれの個性が光るスタッキングマグとコースターは各4種類あり、九谷焼の表現の豊かさを知ることができます。

今回の見学ツアーを企画したディストリクトマネージャー山口さんは、能登半島地震とは関係なく、以前からずっとこのツアーを実現したいと考えていたそうです。 

「地震が発生して、しばらく製造休止していた工房が再開したのを機に、改めて今回のツアーを企画し、実現することができました。 

工房に伺いたいと思っていた理由は、もちろんKUTANIが素晴らしい商品だと思って店頭で販売していたのですが、販売開始から時間の経過と共に生産者の方々と私たちの関係性も少しずつ薄くなっていることを感じていたからです。コロナ禍があったり、パートナー(従業員)にも入れ替わりがあり、関わるメンバーも変化していくので、パートナー同士の会話の中でも『どんな人が作っているんだろう?』と話すこともありました。 

そういったことから、実際にKUTANIを制作する工房を見ることで九谷焼の魅力を知り、改めて私たちと生産者さんとの相互理解と関係性をつなぐ必要があると感じていました」(山口さん) 

真剣な眼差しで職人さんの話を聞く山口さん(左から3人目) 

九谷焼は、採石・陶石を粘土にしたものを、「成形」「素焼き」、釉薬(ゆうやく)を器にかける「施釉(せゆう)」「本窯焼き」「上絵付け」「上絵窯焼き」という6つの製作工程に分けて作られます。それぞれに高い技術を持つプロフェッショナルがおり、石川県を中心とした地場の総合芸術とも言える伝統工芸です。 

「KUTANI」は磁器の形作りと、絵柄作りの製作工程によって工房が分かれています。それぞれの工房で出来上がった磁器と絵柄は最後に転写作業をする工房に集まり完成します。今回の見学ツアーでは磁器と絵柄の製作を行うふたつの工房へ訪れました。 

まず向かったのは、磁器を成形する窯元。ここでは「KUTANI」の成型から釉薬をかけ窯入れまでの工程を別々の職人さんが担っていて、粘土のかたまりが職人さんたちの手作業によって美しく形作られていきます。工房に並ぶ同じような形の皿や器が、機械ではなく人の手によって生み出されていることを知り、一同驚きながら真剣に作業に取り組む職人さんの姿を見つめました。 

次に一行が訪れたのは「KUTANI」の絵柄を製作する工房です。こちらでは、シルクスクリーンという印刷技術を用いて、絵付け用の版を制作していました。九谷焼は五彩を用いる他に手触りがボコボコとした和絵の具と、ツルッとした手触りの洋絵の具を組み合わせられていることが特徴です。一色ごとに版を替え、ずれることがないように転写用フィルムに印刷していきます。版を合わせるのは職人さんの目と手の感覚。時折、版がずれてしまったフィルムをはじいていきます。しかし、素人目にどこがずれたか分からないくらい厳密なチェックが行われていました。 

工房見学に参加した各店舗のパートナーたちは、職人さんたちが一つひとつの工程を丁寧に取り組む姿に感銘を受けながら、「店舗で取り扱うKUTANIをひとつ作るのにこれほど緻密な作業が行われ、多くの人が関わり、様々な工程があるとは知らなかった」と口を揃えました。 

私たちと生産者との関係性をつなぐ 

現在、金沢藤江店でストアマネージャーを務める川村さんは、もともと九谷焼の生産地である小松市出身。そんな川村さんにとって九谷焼は、地元ではよく見る“ごく当たり前”の焼き物だったため、全国的にそれほど有名なものとは実は知らなかったと言います。

「九谷焼が『JIMOTO Made』に採用されていること自体が、以前はすごく不思議だったんですよ(笑)。ですが、思い返すと実家に大切なお客様がみえると、母は九谷焼のコーヒーカップを用意していたのを覚えています」

九谷焼は、地元の人たちからはとてもなじみが深く、昔から親しみのあるおもてなしの品として“当たり前”と“特別”が同居するような存在。身近だからこそ、その良さをよく知らない若い世代の人たちも多いのかもしれません。 

スクリーン技術を驚きの様子で眺めるストアマネージャーの川村さん(写真中央) 

「先日、常連のお客様がお父様へのプレゼントにとKUTANIをお買い求めいただきました。私自身今回改めて九谷焼のことを知ることができて、販売する時にもっと九谷焼の魅力をお客様にお伝えしたいと思いました。実際に工房で見たこと、聞いたことをツアーに参加できなかった店舗のパートナーたちにもシェアしていきたいです」(川村さん) 

未来に語り継ぐ「KUTANIの魅力 

いくつもの工程やたくさんの人の手を介し息づいている九谷焼は、スターバックスのコーヒーで「人がつながり、無限の可能性が生まれる」という想いとの共通点も多くあります。自分たちの仕事に誇りを持って製品を作る職人さんたちの姿に、ツアーに参加したパートナーたちは心を動かされたようでした。 

「九谷焼に対する誇りと、その熱量が本当に素晴らしかったですね。だからでしょうか。アットホームでみなさんそれぞれ仲が良い感じがしました。今日参加した各店舗のパートナーたちも同じことを感じたと思います。私たちスターバックスの強みのひとつもこの熱量なんです。それぞれが見たものをそれぞれの店舗に持ち帰り、しっかりと伝えようと思います。 

一方で、“伝統工芸品“と聞くとどこか特別なものという考えも抱きがちですが、地元民としては九谷焼の魅力は親しみやすさ。もっともっと日常使いをしてもいいものだとも、今回のツアーで改めて思いました」(川村さん) 

「ツアーを企画した私自身も、今回工房でKUTANIが作られていく様子を見て、お客様にその存在をもっと知っていただきたいと改めて思いました。例えば、店舗内のメッセージボードでKUTANIについて紹介したり、店舗で行っているコーヒーセミナーでKUTANIのカップを使ったりと、お客様とKUTANIとの接点を生み出し、実際にお客様の目に触れていただく機会をより多く作りたいなと。 

生産者さんたちは、本当に九谷焼を大切にしています。“愛でる”という表現が近いかもしれません。そして、作り手すべての人が、九谷焼の価値を知ってもらいたいと考えている。伝統工芸というものは、時代を経て脈々と受け継がれてきています。それが魅力のひとつ。未来に語り継ぐというと大げさかもしれないんですけど、この『JIMOTO Made』を通して、九谷焼の価値を広くつなげていきたいと思います」(山口さん)

日本各地の伝統工芸で生産者不足が問題となっていますが、これからもスターバックスは、『JIMOTO Made』を通して、その土地土地の魅力を伝えていきます。

取材協力:伊野正峰株式会社 

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伝統と斬新な発想で生まれた砥部焼のマグがJIMOTO Made+に登場