「カミングアウトされたら?」高校生の疑問に答えるレインボー学校プロジェクト


11月上旬、都内の高校で、LGBTQ+の当事者やアライ(理解者、応援者)であるスターバックスのバリスタが学校を訪問し、体験談を語る出張授業を行いました。参加したのは、高校1年生の約40人。バリスタや認定NPO法人ReBitの講師とともに、LGBTQ+や多様性についての理解を深め、異なる一人ひとりがお互いを認め合い、自分らしく生きるためにできることを話し合いました。今回は、その授業の様子をお届けします。

クラスに3~4人?学校のLGBTQ+の現実

セクシュアル「マイノリティ」という表現の影響もあり、遠い存在と思われがちのLGBTQ+ですが、その数は決して少なくありません。2020年の調査結果では、日本の人口の8.9%、つまり40人クラスでは、3~4人がLGBTQ+という計算になります。授業中に、学生や先生が「カミングアウトを受けた」という体験を共有してくれることも増えており、学校内にも必ずいる、実は身近な存在なのです。
※出典:電通ダイバーシティ・ラボ(2020)「LGBTQ+調査2020」

他の人との違いを持っているのは、LGBTQ+だけではありません。私たち全員が一人ひとり異なることを理解し、それぞれにとっての居場所をつくっていくことを目指して、この出張授業を提供しています。先ほどの調査結果からもわかる通り、10代は多くのLGBTQ+が自分のセクシュアリティを自認する時期。そのため、中学・高校での授業では、カミングアウトされた時に寄り添う気持ちを伝える方法や、本人の許可なく第三者にその人のセクシュアリティを伝える「アウティング」は絶対にしてはいけないことなど、起こりうる状況を想定し、具体的な対応について学びます。

「ありがとう」の言葉が嬉しかった、初めてのカミングアウト

授業は用語や知識を学んだ後に、講師が自分の体験をもとに学生たちに語りかけます。ReBitの講師くっしーさんは、現在50歳、外資系メーカーで勤務しています。「自認する性は男性、からだの性も男性、好きになる性は男性、表現する性は男性の恰好をしていますし、一人称は“俺”。シスジェンダーでゲイの男性です」
※シスジェンダー:自分で認識する自身の性と生まれたときのからだの性が一致する人

くっしーさんが、初めてカミングアウトしたのは高校生の時でした。「中高一貫の男子校で、男性の先輩をすごく好きになりました。どうやって伝えていいのかわからなかったので、顔を真っ赤にしながら、“これ読んでください”と言って、私が毎日つけていた日記を渡しました。“先輩大好きです”と書いてある日記です」

自分の気持ちとともに、セクシュアリティも打ち明けるとても勇気のいる行為。先輩の反応は、くっしーさんにとって嬉しいものだったそうです。「たぶんすごくびっくりしたと思うんですが、数日後に呼び出されて“ありがとう”と言ってくれました。残念ながら恋愛に発展することはありませんでしたが、嫌われるんじゃないかと心配だったので、感謝の言葉をもらえて幸せでした」

理解してくれる存在が、力になる

その後、働き始めたくっしーさんですが、会社では「“自分はゲイではない”と信じないとつらい」と感じるようになります。「今思えば、ゲイだと言っても良かったのかもしれませんが、社会にはそういう人はいないという風潮を感じて、人と違うということがすごく怖かった。自分自身に自信が持てませんでした」

37歳で今のパートナーと出会い、友人には自分のセクシュアリティについて打ち明けていたものの、職場の人にも知ってもらいたいと職場でカミングアウトをします。

「カミングアウトしてみたら、誰からも怒られず、責められず、いじめられず。話したことによって、生まれて初めて“世の中に認められたな”と感じて、もっといろんなことに頑張れるようになりました。自分のことを理解してもらえるということは、こんなにも大きなパワーになると気づきました。皆さんにとっても、そばにいてくれる人、秘密を打ち明けてもいいんだと思える人が近くにいてくれたらと思います」

続いて登壇したのは、グリーンエプロンを着けたなみさん。普段はスターバックスのサイニングストアで、バリスタとして手話を使って働いています。「自認する性は女性、からだの性は女性、好きになる性は男性、表現する性は、スカートやお化粧は嫌いで、ありのままの自分を大切にしています」

なみさんのパートナーは、からだの性は女性で、自認する性は男性です。なみさんに会うまでずっと自分の性に悩み、人に話すこともできずに一人で抱えていたそう。パートナーから自分のセクシュアリティについて打ち明けられたとき、なみさんは「ありがとう」という言葉とともに、受け入れて力になりたいという気持ちを伝えました。なみさんの反応を見て、パートナーは自分に自信を持ち「自分のままでいいんだね」と周囲にもカミングアウトできるようになったと言います。「(パートナーは)元気に、いきいきとするようになりました。今は“何も怖いことがなくなった”と言ってくれています」

2人の経験は、自分をそのまま受け入れ肯定してくれる存在がいかに大きいか、ということを教えてくれます。「理解してくれる人、話を聞いてくれる人の存在は力になる。皆さんもぜひ、誰かにとってそういう存在になってほしいなと思います」(くっしーさん)

2人の話を聞いた後、学生たちからはさまざまな意見や質問が出ました。「私たちの高校には制服があります。伝統を大切にしていて、それはとても素敵なことだと思うんですが、多様性を進めていくためには改革も必要だと感じていて、伝統と改革の間に挟まれてどうしたらいいかなと悩んでいます」「カミングアウトをうけたとき、“ありがとう”の先に何をいうべきかがわからなくて」「私は日本人ではなくて、国籍での差別を受けたことがあります。日本での差別って根強いんじゃないかと思います」といった自分たちの体験に基づく悩みも。学生同士のグループワークでも、熱心に意見を交わしている姿が見られました。

自分らしくいられる居場所を店舗から学校へ広げる「レインボー学校プロジェクト」

この授業は、多様性をテーマにレインボーをモチーフとした商品を販売し、その売上の一部をLGBTQ+の若者たちのサポートのために寄付する「レインボー学校プロジェクト」を通じて実施されています。今年は4月から8月までに、『ステンレスボトル355ml NOFILTER』と『コールドカップタンブラー 710ml NOFILTER』の2つのレインボーカラーグッズをオンライン販売。プロジェクトに賛同いただいたお客様のおかげで、11月から全国の小中高大学にて、5,700人以上の学生や教育関係者へ出張授業を提供していきます。サポートしてくださったお客様に、改めてお礼申し上げます。
※新型コロナウイルス感染拡大等の影響により、授業の参加人数やプロジェクトの活動内容が変更になる可能性があります。

「コーヒーをいれるのには“フィルター”が必要だけれど、人の心には“フィルター”をかけてはいけない」―スターバックスはこれからも、全国のお客様とともに、先入観や思い込み、偏見といった心のフィルターを持たない、すべての人が認め合い、多様性を尊重する「NO FILTER」の輪を広げていけるよう、行動し続けていきます。

スターバックスのLGBTQ+コミュニティ支援とアライとしての取り組みについてはこちら

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