自分の居場所を見つけた、パートナーが伝えたいこと


スターバックスでは、2018年より毎年、プライドウィークに合わせてレインボーカラーの商品を発売。LGBTQ+ アライ(理解者、応援者)である姿勢を明確に示しています。その根底には、Inclusion & Diversityのメッセージとして発信している「NO FILTER」──先入観や思い込み、偏見といったフィルターを持たず、互いに認め合い、一人ひとりが自分らしくいられることへの想いがあります。

2020年からは、商品の売り上げの一部を認定NPO法人ReBitに寄付し、「レインボー学校プロジェクト」をスタート。LGBTQ+の当事者やアライであるパートナー(従業員)が学校を訪問して体験談を語り、学生たちとの対話を通して多様性への理解を深め、異なる一人ひとりの居場所をつくっていくことを目指しています。

これらの取り組みはすべて、スターバックスのミッションとそれを実現するための行動規範「Our Mission and Values」に紐づくもの。「お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります」──スターバックスが掲げるこの姿勢に自分の想いを重ねた、ひとりのパートナーがいます。

柔らかな物腰とさわやかな笑顔を携えて、パートナーの間では「じょーちゃん」の愛称で親しまれる一條さん。

“フィリピン生まれ、長野県山形村育ち。横須賀、青森を経て、東京へ。5人きょうだいの次男で、父親はそれぞれ異なる。スペインとフィリピンと日本のミックスルーツ。国籍は日本。自認する性は「男」、からだの性は「男」、好きになる性は「男」、表現する性は人や場所によって「私」「俺」「自分」と一人称も含めて変わる。チョコレートとアニメが好き。AB型。スターバックスの東京都内の店舗で働くパートナー。彼氏と同棲中。”

これらは、セクシュアリティや属性、彼が自分を表す時に使う言葉たち。もちろんこれだけでは語りきれないし、一括りにしてラベルを貼ることはできません。今回は、スターバックスで働く多様なパートナーのひとり、一條さんをかたちづくってきた、人生の断片を紐解いていきます。

時間をかけて育んでいった家族という居場所

フィリピンで生まれ、2歳頃に長野県山形村に越してきた一條さん。豊かな自然以外は「何もない」場所で、幼少期は虫取りに夢中になって、4人きょうだいの賑やかな家庭でのびのび育ってきました。中学2年生の頃、両親が離婚。その後母が再婚するタイミングで初めて、父親と血のつながりがないことを知ります。

「4つ上の兄と、自分の父親がそれぞれ違うことを母から伝えられて、衝撃でした。それまで、ふたりの妹の父親が自分にとっても実の父親だと思っていたので。事実を知った当時は、裏切られたと感じたし、何を信じたらいいのかわからなくなった。荒れちゃいましたね。反抗期で親とも喧嘩して。その時初めて実の父に会ったんですが、突然そんなこと言われても全く実感が湧かなかったです」

母が再婚した相手が米軍兵だったため、一條さんは、基地がある横須賀、青森の三沢へと引っ越し、米軍基地内の高校に通うように。その間、歳の離れた妹が生まれました。

「当時は葛藤もありましたが、今は血のつながりに関係なく、実の父も育ての父も私の父親だと思っています。明るくてパッションのある母がつなぎ役となって、5人きょうだいみんな仲が良いですし。母に対しても、お母さんの人生だから自由に生きてほしいと思っていて。時間はかかったけれど、自分の家族のかたちを受け入れて、肯定できるようになりました」

自分を偽らなくてもいい、ここではない場所を求めて

自分の出自に対する葛藤の最中にいた中学3年生の時、一條さんは自身のセクシュアリティを自認します。

「ずっと疑問だったんです。恋愛として人を好きになるってどういうことなんだろう?って。小学生の頃は女の子に告白したこともあったけど、自分が好きだからではなく、バレンタインデーにチョコをもらったから、くらいの感覚でした。中学の時にすごく距離の近い男友だちがいたんです。その時はよくわからなかったけど、横須賀に引っ越して離れて、彼に恋愛感情のような好意を寄せていたことに気づきました。

その後、別の男子を好きになって、はっきりと自分が好きになる人は男性なんだなと自覚しました。彼にはメールで想いを伝えたんですが、『気持ち悪い』と返信が来て。まあそうだよな、と思いつつもショックでしたね。それまで長野の田舎で育ってきたからなのか、あんまり世間一般の“あたり前”を意識したことがなくて。異性愛が“普通”という感覚もなく、自分はこういう人(男性)が好きなんだと思うようになった感じでした。でもだんだん、自分はみんなと“違う”んだということに気づいて、後ろめたさを抱くようになりました」

親の離婚をきっかけに出自を知り、生まれ育った土地を離れ、セクシュアリティを認識すると同時に“人と違う”ことを突きつけられる──波のように押し寄せる変化の過程で、一條さんは内側へと籠るようになっていきます。

「周りは男女で交際しているのに、自分だけが男性を好きになって、病気なんじゃないか、知られたら嫌われるんじゃないか、と怯えていました。人と関わるのが苦痛で、世間が怖くて。それまで外で誰かと遊んでいたのに、家で絵を描いたり本を読んだりアニメを観たり、ひとりで完結するものばかりを選んで、思考もネガティブになっていって。私はひとりで大丈夫だと言い聞かせていたけど、それは偽りの自分であることはわかっていたし、ここから抜け出したいと、もがいていましたね」

自分を偽らなくてもいい、ここではない場所へ──。米軍基地内の高校に通っていた一條さんは、アルバイトをして50万円を貯め、進学に必要な日本の高校卒業資格を取得するため通信制高校に通い、声優の専門学校へ。進学するため青森から、18歳で上京します。

自分が自分でいられる居場所と、本当にやりたいことを見つけた

新しい土地で、新しい自分で始める。そんな決意を持って上京した一條さんは、専門学校で仲良くなった友人に自分のセクシュアリティを打ち明けます。

「怖さはあったけど、言わないとまた偽りの自分を演じることになると思い、話したんです。そしたら彼が『人と違っても、大丈夫だよ』と言ってくれて。号泣しました。人と違うことにずっと罪悪感を抱いていたので安心して。彼が受け入れてくれたことをきっかけに、専門学校時代は、嫌われてもいいやと開き直って自分からセクシュアリティをオープンにするようにしていました」

専門学校卒業後、声優を目指しながら、スターバックスでアルバイトを始めた一條さん。そこで「自分の居場所とやりたいことが見つかった」と振り返ります。

「アルバイト1年目の時、仲良くなった女性のパートナーが『じょーちゃんの恋愛対象はどっち?』って聞いてくれたんです。その一言をきっかけにカミングアウトをしたら『そうなんだ〜』とあまりにも自然に受け止めてくれて。お店にはほかにもゲイの方がいたんですね。ゲイでもいいんだ、自分のままでいいんだ、と居場所を見つけたような気がしました。それまで仕事だからと真面目一本で、人との間に壁をつくっていたんですが、一気に殻が破れて、自分を表現できるようになったし、働くことや人と関わることが楽しくなりました」

声優の事務所に所属し、一度はスターバックスを離れたものの、一條さんは1年半後に再びスターバックスに戻ってきます。

「自分の居場所をつくってくれたスターバックスで、自分が本当にやりたいことを考えてみたい、と思ったんです。ちょうどスターバックスがTOKYO RAINBOW PRIDEに出展した頃で、いきいきと働いているLGBTQ+の方たちの姿を見て、すごいことだなと。実際に働く中で改めて、ここは自分が自分でいられる居場所だと思ったし、スターバックスのOur Mission and Valuesの中にある、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくっていくことは、そのまま自分のやりたいことだと気づいたんです」

「人と違っても、大丈夫。」店舗から発信し、居場所をつくっていく

スターバックスの社員となった一條さんは、2022年「レインボー学校プロジェクト」にも参加。自身の言葉で学生たちに語りかけました。

「高校生だった私は、リアルでLGBTQ+の人に出会ったことはなくて、自分はここにいていいのか、ずっと不安でした。逃げるようにして出てきた東京で、自分が自分でいられる居場所を見つけた。悩んでいる当事者の子に、いきいきと働いて恋愛もしている自分の姿を見せられたらいいなと。今の日本では、私は同性のパートナーと結婚ができず、子どもを授かることも難しい状況です。そのため、社会に居場所がないんじゃないかと思うこともあるけど、だからこそ、血のつながりではない関係性で、未来を開拓していく子どもや若い世代に貢献したいという気持ちがあります。

かつての私がそうだったように、誰かひとりでも『人と違っても、大丈夫』『そのままでいいよ』と存在を認めてくれる人がいれば、その安心感から、自分の居場所ややりたいことを見つけていけると思うから」

一條さんのその想いは、日々店舗に立っている時も変わりません。

「レインボー学校プロジェクトで自分のストーリーを語ること。店舗でお客さんに挨拶をして声を掛けること。自分と異なるパートナーと一緒に楽しく働くこと。私はそうやって、『ここにいていいんだよ』というメッセージを発して、誰かの居場所をつくっていきたいんです」


ひとりのお客様とひとりのパートナーのコミュニケーションから。一杯のコーヒーから。そしてひとつのコミュニティから。スターバックスは、セクシュアリティや国籍、あらゆる属性を問わず、誰もが「居場所」と感じられる文化をつくっていけるよう、これからも考え、行動し続けていきます。

Joshua Trujillo

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