国際女性デー コーヒー産業に欠かせない5人の女性たち
<こちらの文書は、2022年3月3日に公開された英語原文記事を翻訳し、編集しました。>
国際女性デーに合わせ、コーヒー産業で活躍する世界の5人の女性のストーリーをお届けします。「最初の10フィート」である生産地から「最後の10フィート」である店舗までの道のりで、生産者、アグロノミスト(農学者)、バイヤー(コーヒーを調達する人)、ロースター(焙煎士)、そしてディストリクトマネージャー(地区担当マネージャー)のこの5人のような女性たちは、私たちに欠かせない役割を担っています。
ブラジル、コーヒー生産者 ワルキリア ペイショット コレアさん
ワルキリアさんはコーヒー生産者になるつもりはありませんでした。
故郷を離れ進学した彼女は教員になるつもりでした。しかし父親が体調を崩し、彼女は父親が1980年代に始めた家業のコーヒー農園を手伝うために故郷に戻りました。
農園に戻った彼女は、自分の能力を周りに認めてもらうことから始めなければなりませんでした。コーヒー産業は従来男性が中心に運営してきたもので、ブラジルでも女性が所有・経営する農園はわずかしかありませんでした。父親が亡くなった6年前、彼女は事業を継ぎましたが、女性の指示で動いてくれる人が見つかるまで数年かかりました。
「私が都会の大学を卒業した女性だからということで、なかなか皆に受け入れられず大変でした。相手を思い、たくさん語りかけ、優しさをもって接することで乗り越えました。」
現在、栽培するコーヒーの品質の高さや農園の運営方針が評価され、ワルキリアさんは地域のパイオニアとなっています。彼女は農薬や化学肥料に頼らず有機肥料を与え、太陽光発電を導入し、コーヒー豆の洗浄や乾燥で用いる水などの資源を節約・再利用し、自生植物を植樹し、土地の自然な水流を保護し、敬意をもって労働者をとりまとめています。
現在は、今でもほとんどの機械を操作するという73歳の母親とともに農園を切り盛りしています。二人でおよそ76,000本のコーヒーの木を育てています。
彼女のコーヒーは、ミナス・ジェライス州の生産者・輸出組合Cooxupéの品質格付けで、最も高いスコアまであと数ポイントという高さです。CooxupéはC.A.F.E. プラクティス認証を取得した彼女のコーヒーをスターバックスに販売しています。
「コーヒーの花の香り、黄色や赤に色づいた果実、そしてコーヒーの成長する姿を見ることはとてもすばらしいこと。コーヒーは心を温めてくれます。私たちはコーヒーが大好きです。」
「ここは私のオフィスです。自然の美しさが感じられるでしょ?ここが私の人生・・・湧き水や小川を守り、自然はこうやって守るものだと他の生産者にも伝えることが、この農園における私の願いです。」
「私には子どもはいませんが、より良い世界のために守り、大切にすることを未来の世代に伝えたいと思います。そして母と共に長生きして、楽しみ、より良い未来を見たいと願っています。」
タンザニア、アグロノミスト(農学者) バハティ・ミィウィロさん
「子どものころの夢は、人に教える仕事をすることでした。コーヒーのことをたくさん学びましたが、今もまだ勉強中です。この知識を自分だけの中にとどめたまま死にたくはありません。」
タンザニアにあるスターバックスのファーマーサポートセンターのアグロノミストであるバハティさんは、4,000~5,000の小規模農園の人々に可能な限り多くのことを伝えるという役割を担っています。ここでは生産者は収入と自給のためのコーヒーを栽培するのが一般的。ワークショップの開催や農園への訪問などを通じて、C.A.F.E プラクティスの実践やコーヒーの品質・作付けの向上の方法の指導や、持続可能性という視野で長期的な栽培を促すなどの取り組みを行っています。
バハティさんは農業大学でフードサイエンス・テクノロジーを学んだ後、地元の大学で経営学、イタリアの大学でコーヒーの経済とサイエンスと2つの修士号を取得。11年程前に国際NPOの品質アドバイザーとしてコーヒー業界での仕事を始め、タンザニア初の女性のコーヒーグレーダー(国際基準のコーヒー鑑定士)となりました。6年前にアグロノミストとしてスターバックスに入社し、教育を十分に受けていない人が多い地域を支えています。
「例えばトウモロコシやバナナ、豆などは数か月で収穫でき、すぐに収入につながるのに対し、コーヒーの木1本が熟すまでは3、4年かかります。 コーヒーはきちんと取り組めは収入をもたらしますが、より多くのリソースの投資、節水やコスト削減に関する技術・ビジネストレーニングに加え、市場価格の変動や悪天候などに対する忍耐力も必要です。」
今では長期的な視野を持ってくれる生産者が増えてきたとバハティさんは言います。彼女はそのような人が他の人の模範になってくれることを願っています。「自分がしたことが生産者に前向きな影響を与えているところを現場で見られることが一番楽しいです。目に見える成果が出ると、みんなも変わってくれるのです。」
「これまで男性が行ってきた仕事を女性たちが始めるきっかけを作りたいと思います。自分たちにもできるんだと、女性たちに実感してほしいです。」
バハティさんは、国際コーヒー女性連盟(International Women’s Coffee Alliance)のタンザニア支部代表も務めており、コーヒー産業で女性の仕事がもっと認められるようにすることが彼女の目標です。女性が農園や土地を所有し、主に男性の仕事である品質管理や輸出、調達などの分野でも女性が活躍できるようになるきっかけを作りたいと考えています。
「コーヒーのバリューチェーンにあるたくさんの機会を女性たちには見てほしいと思います。つながり、力を与えあい、学びあってほしいと思います。」
スイス、コーヒーバイヤー アン・トローマンさん
スターバックスのリザーブコーヒー調達プログラムの責任者だった頃、アンさんはパプアニューギニアで高品質のコーヒーを栽培する女性と出会いました。アンさんは品質の対価として彼女にC.A.F.E. プラクティスによるプレミアム価格が支払われるようにしただけでなく、地域の人々が何時間もかかる水汲みの必要がなくなるよう、浄水装置を作る資金を募る支援を行いました。
「倫理、社会、環境におけるコーヒーバイヤー責任は大きくなっています。おいしいコーヒーを栽培する地域を支援する責任が私たちにはあります。」
「商品のそばに身を置き、コーヒーがどのように栽培されているか、生産者がどんな問題を抱えていたか、収穫の様子やコーヒーの取引や輸出の過程を理解することが私にとって大切だったのです。多くを学びましたし、私に与えられたチャンスの大きさ、その難しさを知りました。生産者の分け前が一番少ないことも理解しました。」
天候に左右されやすく、そして市場の力によって影響を受けるとして、コーヒーはすでに特有の課題に直面しています。これに加え、政治や地理、インフラの不足などによって、アンさんの仕事はさらに難しいものとなります。彼女が今コーヒーを調達している国の一つであるエチオピアは内戦の真っただ中にあります。世界でも最高品質のコーヒーを栽培している地域ではありますが、道路などの整備も十分ではないため、輸出は簡単ではありません。
「ビジネスとコーヒー生産地の人々の双方にとって最良の解決法を探すことはいつも難しいですが、スターバックスのような大きな会社が行動しなければ、一体誰がするというのでしょうか?」
「決して簡単な道のりではありませんし、まっすぐな道でもありません。しかし、私たちには大きなことができるのです。大きな影響を与えることができるという夢を信じていかなければなりません。」
日本、ロースター 河内山さん
「ああいう風に、コーヒーを語ってみたい」
私をコーヒーの世界に引き込んでくれたのが、コーヒーセミナーを開催するスターバックスのバリスタでした。2008年にアルバイトで入社してからコーヒーの勉強を続けていくなかで、焙煎の情報が多くないことに気づき、日本で焙煎の機会があるんだったらその景色をみてみたいと挑戦。2年ほど前からロースターとして勤務しています。
「私はコーヒーという興味がある仕事にバリスタから始め、ブラックエプロンであるコーヒーマスター、コーヒーアンバサダーになることもできました。そして現在はロースターという役割に就くことができ、焙煎の景色を日々目の当たりにすることができています。スターバックスは誰にでも、私のようにお母さんであっても同じチャンスを与えてくれます。」
「これから先も仲間の女性パートナーたちが様々なライフステージを迎えながらも、『さらにチャレンジしたい!』と思うことができ、それが実現できる環境を自分も作って行きたいです。そして、バリスタパートナーたちも焙煎に詳しく、焙煎された豆を理解して抽出できるバリスタパートナーの育成に携わって行きたいと思います。また遠い未来、リタイアした後でも、海外のロースタリーやハシエンダアルサシアでエプロンを着けたいと思っています。」
「スターバックスのコーヒー焙煎の50年の歴史の重みを感じながら、この先50年、次の世代にどう伝え残していくか。毎日ワクワクとドキドキの連続です。」
「我慢することなく、私はこれが好きです、興味があります、これが得意ですと言えて、また受け入れてくれる環境がここにはあります。そして、周囲が自分を知ろうとしてくれています。チャレンジする機会を繋げてくださり、今の自分がここにいます。自分の興味があることや好きなことも自信を持って伝えていいと思います。そして、環境を拡げていきどんどんチャレンジをしてみてください。」
日本、ディストリクトマネージャー 壱岐さん
「お客様やパートナー、スターバックスに関わる人々への感謝の気持ちを考えると、悩んでいる暇がない。どちらかというと行動に落とすことの方が多くて、だから悩んでいる時間が短い。感謝の気持ちが湧いてくる仲間とお客様に、自分は恵まれている。」
21年前に北海道の新店オープンの際に採用してもらいました。既に医学部外科の医局秘書をやっていたものの、カフェ業界への憧れがあり、たまたま目にしたスターバックスの求人を見ると応募最終日。「なんかお告げかもしれない」。それで思い切ってチャレンジしてみようと。
スターバックス初日から秘書職とバリスタには共通点を感じながら、そのまま4年ほどダブルワークの形態を選んで仕事をしていました。どちらも多様な働き方を推奨してくれたことは大きかったですが、業種は違っても、「誰かのサードプレイスをつくる」という大切にしている想いを表現できる場所であったからだと思います。入社してから私は、いちバリスタとして働いていた時間がとても長く、それは目の前の一人のお客様に最高のスターバックス体験を作り出し喜んでもらうにはどうしたらいいかを考える時間が長かったということ。そしてそれが自分の喜びだと信じていました。
今はディストリクトマネージャーとして、ストアマネージャー(店長)ほか店舗のパートナーたちを輝かせるのが仕事となった今も、その喜びは変わらない。「1人1人が生き生きと働けるように、1人1人のお客様に活力を与えられるように、チームで考えてより大きな波及効果を生んでいくことが役割だと思っています。」
「来てくださったお客様がパートナーとお話してドリンクを受け取り、笑顔で帰って下さる瞬間を見るのが、やっぱり嬉しい。日々ストアマネージャーとお店の機会点やお客様のニーズを察するというディスカッションをするんですけど、そのディスカッションの結果が店内で生きていると感じたり、実際にお客様から良いお声を頂けるときに喜びを感じます。」
「スターバックスに居る限り、この会社が大切にしている想いをお客様に伝える“アンカー”の役割を店舗パートナーと担っていく。社会課題への取り組みや店舗からの情報発信でリーダーシップを発揮していきたい。」