コーヒーの最初の10フィートに触れる旅。オリジンエクスペリエンスより


スターバックス コーヒー ジャパンのコーヒーアンバサダーカップ2021のアンバサダー4人が12月、収穫のピークを迎えた中米コスタリカにあるスターバックスの自社農園「ハシエンダ アルサシア」などを巡るオリジンエクスペリエンスに参加しました。コスタリカを舞台にコーヒーの“最初の10フィート”に触れた3日間。普段、日本の店舗でお客様にコーヒーを届け、コーヒーの“最後の10フィート”を担う4人は、収穫や苗の植樹体験、生産者やアグロノミスト(農学者)との対話から、何を見聞きし、感じ取り、日本へ持ち帰ったのでしょうかー。2月まで続く全3回連載の第1回目は、オリジンエクスペリエンス全体を振り返ります。日本から約14,000キロ離れた土地での体験、触れ合った人の思いをたくさんの写真とともに。連載2、3回目は、アンバサダーの2人がそれぞれの視点で感じたことを綴ります。

ビジターセンターから始まるオリジンエクスペリエンス

標高2,704メートルのポアス火山の中腹約1,400メートル付近に広がるハシエンダ アルサシア。市街地を抜け、急峻な山道を進むと、一行を歓迎してくれたのは、農園内のビジターセンターで働くパートナー(従業員)たち。
「Pura Vida‼」「Welcome to Hacienda Alsacia!!」。画面越しに見ていた光景が目の前に広がり、一様に笑顔がはじけます。そして、歓喜の中、オリジンエクスペリエンス、スタート。

Day1 :愛、信じること、希望を思い植えるコーヒー

1日目は、ツアーガイドのリードで農園内を見学。苗の育つ過程から、3年を過ぎた木の生育を学び、途中、斜面でコーヒーチェリーを味わい、「甘い!」「新鮮」。バーチャルツアーではできない体験です。水洗式加工法で導入が進む水使用量を大きく削減した果肉除去機や病害虫に強い品種を見学し、屋外のパティオでは乾燥工程も観察しました。日差しの強さに太陽を近くに感じます。気温は約25度。生態系豊かな農園でさまざまな鳥の鳴き声を耳にしながらさらに奥へ。ハシエンダ アルサシアでコーヒー苗の研究開発を担当するアグロノミスト(農学者)から説明を受けます。持続可能なコーヒーの生産に向け多様な品種を育て、気候や土壌が異なるそれぞれの地域に合った品種の研究開発を日々、続けています。ここを拠点に、高品質で、安定した収穫量につながるサポートを世界10カ所のファーマーサポートセンターで行っています。

そして、一行は、「エスペランサ」(スペイン語で「希望」)と呼ばれる区画へー。

「愛、信じること、希望、を思いながら植えてください」
この農園のマネージャーであるビクター・トレホスさんの指導の下、土を耕し、手を泥だらけにしながら苗を植えます。苗の横の杭には、名前、そして「未来」「日本」などと記しました。2020年までに400人のパートナーが植樹し、この活動は続きます。その後はコーヒーの収穫体験。ニカラグアのピッカーやビクターさんからコツを教わりながら熟れた実だけを摘んでいきます。丁寧に一つずつ、量ではなく、質を優先して素早く手を動かします。最後にコーヒーの加工を行うミルを見学して1日目は終了です。ウェットミルでは、加工した水のリサイクルやコーヒー果肉を活用して廃棄物を削減する環境負荷低減の取り組みを学び、ドライミルでは機械が密度や色味でコーヒー豆の品質を識別する技術を学びました。

Day2:“モデル農園”の存在。良い循環を未来に

2日目は、標高1,058メートルにあるナポレオンさんの農園を訪ねました。かつて、さび病の被害を大きく受けていたナポレオンさんの農園ですが、スターバックスが開発した品種を導入し、現在は高い収穫量を誇っています。実際にコミュニケーションを取るアグロノミストで、スターバックスで研究開発をリードするカルロス・マリオ・ロドリゲスさんは、土壌分析やシェードツリーの効果を挙げ、さらに生産者との密なコミュニケーション、農園の管理が非常に行き届いている点を好事例として紹介。こうした“モデル農園”の誕生が好循環を生み、その土地ごとの生産者の生活をさらに豊かにしています。「収量が上がり、生産者の笑顔を見た時に一番のやりがいを感じる」。カルロスさんの目はまっすぐに、未来を見据えます。

スターバックスは、多くの小規模農家からコーヒーを購入しています。そうした小規模農家を取りまとめる協同組合「Coope Victoria」の施設には、生産者が次々とコーヒーチェリーを運び込んできます。収量の測定や品質確認など実際のやりとりを見学。さらに、周辺の女性の小規模農家に向けた支援プログラム「Been Voyage」について、説明を受けました。スターバックスでは、小規模の女性生産者のビジネスの成功を目的にスターバックス基金を通じ、トレーニングサポートや融資、最近ではコロナ禍で困窮した世帯への食事や生活用品の提供などを実施。生産者コミュニティを支援する動きはここ、コスタリカや全世界へ広がっています。その後は、生豆の輸送業者を訪ねますバスで2時間ほど揺られた先、生豆特有の香りが漂う大きな倉庫へ。「コーヒーを集めるのは簡単でも、最高品質のコーヒーを集めなくてはいけない。スターバックスだから」。スターバックスのコーヒーバイヤーとやりとりする中で感じている、品質へのこだわり、妥協しない姿勢を参加者に語りかけました。

Day3:心に沁みるコールドブリュー コーヒー

3日目、ひんやりと小雨が舞ったコスタリカ。ハシエンダ アルサシアの一角で、この日最初に味わったのは、コールドブリューコーヒー。すっきりとした味わいが、これまでの2日間の体験とともに体に染みわたっていきます。霧が立ち込める一面のコーヒーツリーの中、ビクターさんが思いを伝えます。生産においては、「コーヒーの声なき声を聴くことが何より大切」と。「私たちはエクスペリエンスを創り上げている」と続けます。高品質のコーヒーを楽しむエクスペリエンス、そして、収穫するピッカーの方たちの生活、そして研究開発を続けることで生産者の生活をより豊かにしていくエクスペリエンスがここ、ハシエンダ アルサシアで日々、育まれています。

そして、最後はスターバックスのエシカルな調達を支える「C.A.F.Eプラクティス」に関するワークショップ、GCQ(グローバルコーヒークオリティ)のパートナー直伝のカッピングを体験。感じた風味を自分の言葉で表現します。参加したパートナーからは、「実際に品質が良くなかった場合に生産者へのフィードバックの仕方は?」「意見が合わない場合はあるのか」「どのぐらいの時間をかけて行うのか」―など活発に質問が飛び交い、品質へのこだわりを間近に見聞きすることができました。日も傾きかけた夕方、農園一面が見渡せる高台で、ファーマーサポートセンターで働くパートナーから活動の全体像を聞き、クロージングとなりました。


この先もつながる、オリジンエクスペリエンスの輪

今回、4人が参加したオリジンエクスペリエンスですが、コロナ前の2019年に日本からも数人が参加し、コーヒーの苗を植樹しました。それから3年。実は今回、1日目に収穫体験したコーヒーはそのときに植えたもの。すっかり背を伸ばしたコーヒーの木は看板を追い抜き、一面を緑に覆っていました。ここにも、小さな未来への希望を見ることができました。

オリジンエクスペリエンスはこの先の1年間で、スターバックスで働く900人ものパートナーが参加します。農園を巡り、苗を植え、コーヒーの“最初の10フィート”に触れます。こうして、ハシエンダ アルサシアには、一つ、また一つと新たな希望が生まれていきます。

次回は1月20日ごろ、中日本リージョナルアンバサダーの斉藤さんが担当します。

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現代アートに出合う“共同アトリエ” のような京都BAL店