今年も始まりました。スターバックスのバリスタが多様な性について語る「レインボー学校プロジェクト」


「普段はスターバックスの店舗でバリスタとして働いています。今日はみんなとセクシュアリティや自分らしく生きることについて話したいと思って来ました」。10月下旬、神奈川県内の高校で、スターバックスのバリスタらLGBTQ+当事者が、自分の経験を語り、生徒たちと多様性について考える「レインボー学校プロジェクト」の出張授業が行われました。

この授業は、多様性をテーマにレインボーをモチーフとした商品を販売し、その売上の一部を認定NPO法人ReBit(以下、ReBit)に寄付することで実施されています。プロジェクトに共感した多くのお客様のサポートのおかげで、実施2年目となった今年度は、昨年の6倍以上となる19の中学・高校・大学にて、約5,700名の若者や教育関係者へ、多様性やLGBTQ+への理解を深める出張授業を行う予定です
※新型コロナウイルス感染拡大等の影響により、授業の実施回数やプロジェクトの活動内容が変更になる可能性があります。

この日の授業には、1クラス約40人が対面で参加。新型コロナウイルス感染拡大予防のため、残りの6クラスは校内の各教室でオンライン配信を見ながら、多様な性を切り口に、多様性や自分らしく生きることについて学び、話し合いました。

左利きやAB型の人と同じぐらい。実は身近なLGBTQ+の存在

授業は、ReBitの講師としやさんが多様な性について紹介するところから、スタートしました。LGBTQ+は外見ではわからず、国内でカミングアウトしづらい状況にあります。遠い存在のように感じられるかもしれませんが、「LGBTQ+の人は、日本では3~10%。これは左利きの人やAB型の人、または日本の六大名字である佐藤、鈴木、高橋、田中、渡辺、伊藤を合わせた人数と同じぐらいです」。予想以上に身近な存在であることに、高校生からも驚きの声が上がります。

次に、映像を見ながら様々なセクシュアリティの人の声を聞き、マジョリティとされる「異性を好きになる(ヘテロセクシュアル/異性愛者)」かつ「からだの性別と自認する性が一致している(シスジェンダー)」という人にも名前があり、グラデーションのように多様なセクシュアリティのうちの1つであることを学びます。「セクシュアリティは人の数だけ存在します。大切なアイデンティティの一部であり、セクシュアリティを尊重することは、その人自身を尊重することです」というとしやさんの言葉に、高校生たちは真剣な面持ちで深く頷いていました。

セクシャリティに悩んだ学生時代。自分を受け入れてくれた存在が自信になり、オープンに語れるように

知識を学んだ後は、LGBTQ+当事者が自身のライフストーリーを語ります。神奈川県内のスターバックスでバリスタとして働くゆきさんは、体の性は女性ですが、男女の枠に当てはまらない「ノンバイナリー」である、と自認しています。中学生の頃から親友は男性、恋心を抱く相手は女性かもしれないと思っていたというゆきさん。男女への気持ちの違いや、友情と恋愛の違いに悩むことも多く、周りからも「(男性の親友と)付き合っているんでしょ?」「男女の友情ってありえない」と理解してもらえなかった、と語ります。

そんなゆきさんがオープンに自分のセクシュアリティを語れるようになったのは、高校時代にオーストラリアでファームステイをしたのがきっかけでした。ステイ先の家族と一緒に、馬に餌をあげたり畑を耕したりと、「働かざる者食うべからず」の環境で過ごす中で、服装や性別を意識せず、仕事だけに没頭できる生活を心地良く感じたとのこと。また、「私はshe(彼女)と呼ばれたくない」という考えも周囲がすぐに受け入れてくれました。この経験で自信をつけたゆきさんは、帰国後も同じように振る舞ってみたところ、高校を卒業する頃には「男女の友情はゆきちゃんならありだね」と周りに受け入れられるようになったそうです。

大学卒業後は私服勤務と平日休みに惹かれ、スターバックスに入社したゆきさん。長期休暇のたびにアメリカに旅行に行き、現地のLGBTQ+がのびのびと暮らしていることに大きく影響を受けました。今はアメリカで身につけた自由なあり方を、スターバックスの店舗を通じてお客様や共に働くバリスタにも広げたいと思いながら店舗に立っています。自分らしい服装で働くことができて、バリスタ同士をセクシャリティに関係なく仲間であると考える、多様性が文化として根付いたスターバックスだからこそ、ノンバイナリーであることで困ったことはないそうです。

歌手の宇多田ヒカルさんがノンバイナリーであることを発表したニュースを見ていたお母さんが「あら、あなたもこれ(ノンバイナリー)じゃない?」と自然な会話の中で受け入れてくれ、「カミングアウトが予想以上に簡単に済んでしまった(笑)」。終始明るく、笑顔で語るゆきさんの話に、時に頷き、時に笑い声を上げながら、楽しそうに聞いている高校生の姿が印象的でした。

誰もが自分らしくいられる居場所を広げたい。スターバックスが大切にする多様性の価値観を、店舗から学校へ

その後、少人数のグループに分かれ、多様性を尊重するためにできることを考えるワークでは、高校生が熱心に意見交換を行いました。
「もし身近な人からカミングアウトを受けたらどうする?」「自分自身や周りの違いを尊重するためにできることとは?」
それぞれの思いを共有しながら、「カミングアウトしてくれた人には、信頼して話してくれたことに感謝を伝える」「その人の話を否定せずに受け入れる」「相手の立場に寄り添い、同じ目線で考える」などの大切なポイントを確認しました。

「多様性が輝く未来をつくるのは、みなさん高校生です。自分の当たり前が、他の人にとっては当たり前ではないということを意識しながら、相手に接することができる人になってもらえたら嬉しい」。ゆきさんが高校生に語り掛け、出張授業は終了しました。

レインボー学校プロジェクトは、スターバックスが大切にする「誰もが自分の居場所と感じられる文化」を店舗から学校へ広げ、ReBitと共に若者のLGBTQ+理解促進に取り組んでいることが評価され、セクシュアル・マイノリティへの取り組みの評価指標である「PRIDE指標2021」のベストプラクティスを受賞しました。プロジェクトに賛同し、サポートしてくださったお客様に、改めて感謝申し上げます。

誰もが自分らしく生きられる社会を目指して。スターバックスはこれからも、全国のお客様と共に、先入観や思い込み、偏見といった心のフィルターのない、すべての人が認め合い、多様性を尊重する「NO FILTER」の輪を広げるために、アクションを続けていきます。

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現代アートに出合う“共同アトリエ” のような京都BAL店