自分の心地よい距離感で寄り添い、この街と人の可能性を引き出せるように(愛知県・名古屋市)


スターバックスでは、人、地域、コミュニティとのつながりを大切にしています。地域に根ざした店舗であることを目指して店舗・地域ごとの取り組みを積極的に行っています。

そんなスターバックスの想いを体現し、お客様だけでなく、地域の団体や行政を巻き込んでコミュニティの輪を大きくしている店舗が、愛知県名古屋市にあります。名古屋城を中心とした緑豊かな名城公園の一角にあるにあるその店舗には、地域の人々やお客様たちが「彼女がいるから」と声をそろえる人物がいます。その人、名城公園店のストアマネージャー(店長)和田さんは、人一倍の行動力と発信力を持ちながら、親しみやすく気負いのない距離感で、地域と人と店舗がともに歩む道を形づくっています。

地域の課題やニーズを聞くとアイデアが溢れてくる

新卒で入社して20年、この店舗のストアマネージャーになってからは7年が経つという和田さん。オープンと同時に配属され、今では同店の顔として地域の方々にも認知されていますが、それは和田さんが地域の人たちと広く深くつながってきたからこそ。いまでは「和田さんあっての名城公園店」と称されるようになりました。

和田さんの発案により、これまで様々な取り組みを行ってきた同店。店舗の判断で以前から率先して店内ご利用のお客様にはマグカップでのドリンク提供をはじめたり、公園で豆かすの再利用を行ったりと、サステナブルな取り組みを積極的に行っている店舗として、社内でも注目を集めています。

「もともとサステナビリティに力を入れようと意気込んでいたというより、地域と店舗をつなげることを考える延長線上で全てやってきたことです。ここは公園の中という立地。なので、豆かすを堆肥にして公園に戻しませんか?と、公園のフラワープラザに声をかけて実現しました。

店舗運営をする中で、そのお店のある地域が持つニーズに合わせて企画を考えるのが好きなんです。お客様や地域の方々とお話ししていると地域の課題も見えてきて、普段のサービスとは別に、そういった課題を解決するためのアイデアがどんどん溢れてきます」

そんな和田さんは、ある日、店舗の横の公園で何か活動をしている2人組を見かけます。ジョギングをしているようだけど、それだけではなさそう。「ゴミも拾っているみたいだけど、何をしているのだろう?」と不思議に思い、ネットで検索してみたそうです。そして、それが『プロギング』という、ジョギングしながらゴミ拾いをするフィットネスだと知ります。

エクササイズができて環境保全にもつながる、店舗が行うコミュニティ コネクション活動(お客様やコミュニティの人たちをつなぎ、地域に前向きな変化を起こす活動)として良いのでは?と考えた和田さんは、SNSを通じて早速彼らにダイレクトメッセージを送りました。時はコロナ禍、店舗の活動が制限されていたため、まずは個人として参加することに。

店舗主催からはじまり、行政も巻き込むムーブメントになったプロギング

気になったところから、即座に検索してコンタクトを取るまでのスピード感が、行動力のある和田さんらしさ。連絡を受けたプロギングジャパン代表の常田さんは、当時を振り返りこう語ります。

プロギングジャパン代表の常田さんと

「プロギングと言っても誰にも知られていない頃でした。とりあえず実践しようと創業メンバーと名城公園で始めたばかりだったのですが、和田さんが気づいてくれて嬉しかったですし、仲間が増える!と思い、心強かったです」(常田さん)

緊急事態宣言で休業中のお店が再開したら、地域とのつながりを作れるイベントとして店舗主催でプロギングを実施したい、と考えた和田さん。常田さんとも連携しながら、周りの人たちにも発信していきました。

名城公園店で企画を立て、近隣の40店舗に参加を呼びかけた結果、今では同店のみならず、周辺店舗が持ち回りで開催するほどに広がっています。その様子を知ってプロギングに興味を持った遠方の店舗からも問い合わせがくるのだとか。参加人数もどんどん増えています。

「最初の参加者はスターバックスのパートナー(従業員)ばかりでしたが、今では彼らの家族も、子どもたちも、そして常連さんも参加してくださるようになりました。プロギングで、今まで出会わなかった人たち、接点のなかった人同士がつながっていくのを実感しています。

新しい友達ができたり、終わった後にコーヒーを飲みながら色々なお話を聞いて新しい価値観や影響を受けたり、単なるゴミ拾いではなく、人と人がつながる活動なんです。自分の心も健康になっているなと感じています」(和田さん)

たくさんの人が集まった名古屋久屋南店主催のプロギングイベント

そのつながりは、プロギングジャパンとスターバックス店舗だけに留まらず、和田さんの働きかけにより、名古屋市主催のプロギングイベントにまで発展しました。

「スターバックスを利用される方は環境に配慮する方も多いですし、和田さんにお声がけいただいて一緒にやらせてもらうようになって広がりが加速したと感じています。和田さんがそれまでにも地域とのイベントやワークショップなどを積極的に行っていたので、市の職員さんもご紹介いただいて、名古屋市とのイベントも始まったんです」(常田さん)

和田さんは市主催のプロギングの開催時にも店内で告知したり、店舗を無料給水スポットとして解放したり、紹介してつなぐ役割だけでなく、一歩先の気遣いで地域の活動を応援します。また、お客様が自主的にプロギングがやりたい時にも気軽にできるようにと、ゴミ袋や軍手などの用具を店舗で預かるサービスまで行っています。その気配りに「本当に助かっている」と語るのは、プロギングをきっかけに名城公園店の常連になった大島さんと伊藤さん。

プロギング後にコーヒーを飲みながら話す常連の伊藤さん(左)と大島さん(右)

「和田さんのご好意で、用具を店舗に置いていただいていて。そんなことをしてくれるお店はなかなかないですので、感謝の気持ちも込めて通うようになりました。お店の人ともみんな顔なじみになりましたし、プロギング以外でも近くにいたら寄っています」(大島さん)

「私もプロギングを始めるまで、名城公園店に行ったことはなかったんですが、今では、プロギングが終わったら必ずみんなでお茶していますね」(伊藤さん)

店舗と地域とともにあり続けるからこそ、生み出せる変化

プロギングがここまで広がっているのは、和田さんの訴求力と人柄の良さも大きな要因の一つと言えます。

「和田さんのゆるっとした温かさは、誰も取り残さないという、見守るような優しさがあります。『さぁみんな、盛り上がっていこう!』と気合いで強制するのではなく、どんな方が来てもふわっとした温かさで一緒にやりましょうと声をかけてくれる。だからこそ、リピート率も高いです」(常田さん)

プロギング開始前に、「腰を落として」と走りながらゴミを拾う時のコツを教える和田さん

「自分が心地よい距離感でいたいんです。自分も毎週来なきゃと思うと辛くなるので、行ける時に行くというスタンスで」という和田さんの、無理のない提案の仕方が、まさに持続可能性につながっているのです。

プロギングをきっかけに、雇用につながったケースもありました。プロギングに参加していた70代の女性のコミュニケーション力を見て、和田さんから声をかけたと言います。

「参加されている方全員にまんべんなくお話しされている姿を見て、彼女がお店でエプロンをつけてお客様と会話したり、若いパートナーたちとお仕事しているイメージが湧いて、お誘いしました。私もこんなふうに歳を重ねたいなと思う方なんです。

彼女が働いていると、お客様から声をかける光景をよく目にします。普通はなかなかないことなので、それだけみんなから注目されている存在なのだと思います。彼女の姿を見て、シニアの方が『私にもできますか?』と応募してきてくれたりもしています」

プロギングの活動は、和田さん自身の想像も越えて、さまざまな新しい出会いや変化のきっかけを生み出しています。そして、つながりがつながりを呼び、和田さんを中心に波紋が広がるようにコミュニケーションが生まれ、“店舗ができること”の無限大の可能性を感じさせてくれます。

「店舗に身を置いてパートナーやお客様の近くで直接想いを伝えたり、何かを働きかけたりしていくことで、私だけではなく彼らから派生して、地域に影響を与えていくことができると思っています。

パートナーたち自身も自分で気づいていない可能性や才能がたくさんあると思うし、発信したいことを持っている人もいるから、みんながそれぞれに活躍できるような場所を作りたいですね。

私がストアマネージャーとしてしっかりパートナーたちと関わって、ひとり一人の個性や才能を引き出してあげることが、結果、社会に貢献することにつながるのだと信じています」

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